トランプ米政権が、国際刑事裁判所(オランダ・ハーグ、ICC)への新たな制裁に踏み出した。これまでは赤根智子所長ら個人に制裁を科してきたが、今回は組織そのものが対象だ。どのような影響があるのか。
制裁を受けたNGOの事例
一つの参考事例が、2025年9月、ICCとの協力関係を理由に米国から制裁を科されたNGO「アルハック」だ。パレスチナ自治区ヨルダン川西岸のラマラを拠点に、イスラエルによる人権侵害を記録する人権団体だ。
ザイナ・エルハルン広報担当によると、組織の口座が使えなくなり、スタッフへの給与送金などが滞っているという。寄付も受け付けられなくなったほか、グーグルのアカウントやニュースレターを送るために必要なサービス、活動を紹介していたユーチューブの動画も使えなくなった。人権侵害を記録する活動は続けているが、「その規模はとても小さくなった」。
ICCへの影響と懸念
ICCそのものが制裁対象となれば、送金や電子データのやりとりや保管といった業務に影響が及びかねないほか、ICCに協力する団体や個人が、ICCから距離を置きかねない。ICCが被害者への補償金などにあてる「被害者信託基金」の運用も妨げられる可能性がある。
そうなれば、被害者は裁きや償いの場を失うことになる。エルハルンさんは「被害者にとって、ICCは最後の望みなのです」と強調し、こうした問題が「パレスチナを越えて世界に広がることになる」と訴えた。
「1990年代に戻ったようだ」
25年8月、イスラエルのネタニヤフ首相らへの逮捕状発行を理由に米国から制裁を科されたICCのニコラ・ギユー裁判官は26年9月、「1990年代に戻ったようだ」とオランダ紙トラウに語った。「初めて米国依存に気づいた」と述べ、制裁初日からタクシーの配車サービスが使えなくなるなど、日常生活への影響も明らかになった。