トム・クルーズの魅力は「目」にあり イニャリトゥ監督が圧倒された演技
トム・クルーズの魅力は「目」にあり イニャリトゥ監督が圧倒された演技

映画『DIGGER/ディガー』(公開中)で初めてタッグを組んだアレハンドロ・G・イニャリトゥ監督は、トム・クルーズの俳優としての魅力について「彼の『目』だと思います」と語った。同作でクルーズは、ぽっこりと突き出た腹や薄く乱れた白髪交じりの頭髪、たるんだ顔という、素顔とは大きく異なる姿で登場する。

監督が語る「目の力」

クルーズが演じるディガー・ロックウェルは、利益を最優先する大金持ちで傲慢な石油採掘会社のCEO。その欲深い行動で地球滅亡の危機を招き、自ら事態の収拾に乗り出す人物だ。近年は「ミッション:インポッシブル」シリーズや『トップガン マーヴェリック』など、身体を駆使するアクションの印象が強いが、監督は「トムの目には、感情的な可能性が実に豊かに宿っています。あの目は観客や私と深く心を通わせる力を持っており、投影できる感情の幅が非常に広いのです」と語る。

約10分のモノローグへの驚き

クルーズは『マグノリア』『レインマン』でのドラマや、『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』でのコメディなど、幅広いジャンルで多彩な演技を披露してきた。監督は「人間の幅広い感情を表現できる力量があることは、すでに証明されています」と話す。その表現力をディガーという人物にどう生かすかを徹底的に話し合い、風刺、喜劇、ドラマという異なる側面を演じ分け、単なる風刺的な人物にとどまらない多面的な奥行きを与えることを目指したという。

その力量が発揮された場面の一つが、約10分間のモノローグだ。ヤジや怒号の飛び交う中でディガーが弁明や対応策を述べる。長いせりふと複雑な動きを伴うこのシーンはワンショットで撮影され、監督は「そのモノローグは非常に難易度が高かった。あれほど複雑なシーンを、これほど力強く圧倒的な演技で見事にやり遂げた姿を見たら、観客は本当に驚くと思う」と語った。「トムの持つスキルと、その表現力・伝達力の凄まじさには心底圧倒された」と振り返る。

魔法のような演技の過程

その演技が生まれる過程への驚きは、来日記者会見でも語られた。クルーズが細やかな選択を重ねながら人物の異なる姿を作り上げていく様子について、監督は「俳優ではない私にとって、魔法のようでした。どうやっているのか、理解できないほどです」と表現。「彼にとって演技は、私たちが歩くのと同じようなもの」と続け、「歩いているとき、私たちは『歩こう』と考えていません。ただ歩いています」と説明した。長年の経験を通じて表現する力が自然に体に備わっている。その境地に、監督は驚きと敬意を示していた。