トランプ米大統領がロシアに抗戦するウクライナの手足を縛ろうとしている。理解に苦しむ話だ。矛先が逆さまで、侵略者を利するだけではないのか。
米政権の一方的な対応
トランプ氏は9日、SNSで、ロシアが米国や国際市場への軽油の供給で合意したと表明した。米財務省はロシアの軽油輸出への制裁を緩和した。ロシアのプーチン政権は軽油の輸出禁止の一部緩和を決めた。
さらにトランプ氏は11日、ロシアとウクライナがエネルギー関連施設への攻撃停止で合意し、即時発効すると一方的に主張した。ウクライナのゼレンスキー大統領はエネルギー関連施設への攻撃の相互停止について、米メディアの取材に「初耳だ」と驚きを隠さなかった。「露側がエネルギー分野の停戦に応じるなら同意する」とも語った。
ただし、ゼレンスキー氏は、トランプ氏の投稿後も露軍がウクライナの発電所を攻撃したとXで明らかにした。
ウクライナの努力を台無しにする
トランプ氏が、ウクライナの頭越しにエネルギー関連施設への攻撃停止を言い出したのは疑問である。ウクライナは無人機を使って露国内の製油施設などを攻撃し、ロシアの継戦能力を減じようと努めてきた。
英紙ガーディアンによると、今年の7、8月に韓国からロシアへ軽油が17万トン以上も運ばれた事実も明らかになっている。ウクライナの抗戦は一定の効果があったことを意味する。今回のトランプ政権の対応はウクライナの努力を台無しにするものだ。露側の軽油生産を復活させ、その侵略戦争を後押しすることになりかねない。
中間選挙をにらむ思惑か
11月の中間選挙で与党共和党の劣勢が報じられている。燃料価格の引き下げを実現することで米有権者の歓心を買おうとしているのかもしれないが、期待通りになるかは不透明だ。韓国から軽油を運ばなければならないようなロシアに油価を左右する迅速かつ大量の輸出ができるかは疑わしい。
ウクライナがトランプ政権への不満を強めているのはもっともである。トランプ政権はウクライナがロシアの製油所への攻撃をやめなければ、情報共有を打ち切ることをちらつかせている。戦争を止めるために圧力をかける相手を取り違えてはならない。