米イリノイ州オルトン近郊の図書館で、奴隷制から逃れた人々を支えた「地下鉄道」の資料が見つかった。編者は93歳の郷土史家シャーロット・ジョンソンさん。長年の調査で、オルトンを通る地下鉄道の「駅」32カ所の所在を突き止めた。
「鉄道」と呼ばれた非公式なネットワーク
「地下鉄道」とは、線路も列車もない、奴隷制が存在した時代に奴隷状態から逃れた人々と、道中でかくまい、食べ物や移動手段を与えた人々や場所の非公式なネットワークだ。かくまう家や教会などは「駅」、次の場所まで案内する人は「車掌」と呼ばれることがあったが、統一的な組織や路線図があったわけではない。
図書館の書棚に、地元の黒人集落ロッキーフォークの歴史をまとめた資料があった。古老への聞き取りリスト、新聞の切り抜き、教会や土地の記録、家族史の資料が束ねられている。編者の名はシャーロット・ジョンソン。聞き取り調査を担った人物名と一致した。
偶然の出会いが結んだ縁
カウンターで相談すると、思いがけない答えが返ってきた。「シャーロットの娘リネイはここの職員ですよ」。今日は休みで週末なら会えるというが、記者はその前に次の町へ移動しなければならなかった。せめて電話で話せないかと頼み込んでいると、入り口から女性が入ってきた。リネイさんだった。休みの日に、たまたま職場へ立ち寄ったのだった。
事情を話すと、「あなた幸運の持ち主ね!」と大笑い。その夜、リネイさんに案内され、シャーロットさんの自宅を訪ねた。リネイさんは母を「93歳のおせっかい焼き。郷土史家のシャーロットです。人生や物語というパズルに夢中になる人です」と紹介した。
地図に浮かび上がるもう一つの交通網
シャーロットさんが、色分けした印を書き込んだ大きな市街図を開き、説明を始めた。ミシシッピ川岸から町の北へ、赤や青、黄、緑の印が散らばっている。長年の調査で所在を突き止めた、地下鉄道の「駅」だ。現在の道路地図にはない、もう一つの交通網が浮かび上がっていた。