トランプ氏、不法移民強制送還に軍活用の大統領令を計画
トランプ氏、不法移民強制送還に軍活用の大統領令計画

ドナルド・トランプ前米大統領が、不法移民の強制送還(deportation)に軍を活用する大統領令を準備していることが、複数の関係者の話として米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)の18日付報道で明らかになった。同紙によると、トランプ氏は2025年1月の大統領就任後、即座にこの大統領令に署名する意向で、移民取締りを国防総省(Pentagon)の任務として正式に位置づける方針だ。

過去の大統領令を基にした新たな移民政策

この大統領令案は、トランプ政権下で2017年から2021年にかけて発令された複数の大統領令を基にしている。特に、2017年1月に署名された「国境の安全と移民法の執行強化」に関する大統領令(Executive Order 13767)や、2019年に発令された「国境での人道危機への対応」に関する大統領令などが参考にされている。これらの大統領令は、国境警備の強化や移民法違反者の迅速な強制送還を目的としていたが、軍の直接的な関与は限定的だった。

新たな大統領令では、国防総省に対し、国土安全保障省(DHS)による不法移民の摘発・送還作戦を支援するよう指示する内容が含まれる。具体的には、軍用機を使った送還の実施や、国境地域での監視活動の強化、さらには強制送還対象者の収容施設の建設支援などが想定されている。トランプ陣営のアドバイザーはNYTに対し、「これは単なる象徴的な措置ではなく、実際に軍のリソースを動員して不法移民問題に取り組む現実的な計画だ」と語った。

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法的・政治的な課題

しかし、軍を国内法執行に使用することには、法的な障壁が存在する。1878年に制定されたポージー・コモントゥス法(Posse Comitatus Act)は、連邦軍が国内での法執行活動に参加することを原則として禁止している。ただし、同法には例外があり、例えば1792年の民兵法(Militia Act)や、2006年の国防権限法(National Defense Authorization Act)に基づき、大統領は国内の反乱や暴動に対処するために軍を動員できる。トランプ陣営は、不法移民の流入を「侵略(invasion)」と位置づけることで、こうした例外規定を適用しようとしている。

移民法専門家のサラ・ピアース氏(移民政策研究所)は、「不法移民を『侵略』と定義するのは憲法上の解釈として無理がある。裁判所はこれまで、移民問題を国内法執行の枠組みで扱っており、軍の関与は違憲と判断される可能性が高い」と指摘する。また、民主党の議員らは直ちに反発しており、上院司法委員会のディック・ダービン議員(民主党)は声明で「軍を移民取締りの道具に使うのは、アメリカの価値観に反する。もしトランプ氏がそんな大統領令を出せば、我々は法的手段で阻止する」と述べた。

過去の試みと今後の展望

トランプ氏は前政権でも、軍を国境警備に活用しようと試みたことがある。2018年には、メキシコ国境に約5,800人の現役軍人を派遣し、キャラバンと呼ばれる移民集団の流入を阻止する作戦を実施した。しかし、その際も軍の役割は監視や支援に限定され、直接的な強制送還には関与しなかった。今回の計画は、その範囲を大幅に拡大するものだ。

一方、共和党内でも意見は分かれている。強硬派のトム・コットン上院議員(アーカンソー州)は「不法移民は国家の安全を脅かしており、軍の活用は当然の選択肢だ」と支持する一方、穏健派のリサ・マーカウスキー上院議員(アラスカ州)は「軍の役割を再定義することには慎重であるべきだ」と懸念を示す。

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この大統領令が実際に発令された場合、即座に法廷闘争に発展するのは確実だ。アメリカ自由人権協会(ACLU)は既に、軍を移民取締りに使うことは違憲だとして訴訟を起こす準備を進めていると発表した。また、複数の州知事(カリフォルニア州ギャビン・ニューサム氏、ニューヨーク州ケーシー・ホークル氏など)も、州兵の協力を拒否する方針を示している。

トランプ陣営は、この大統領令を2024年大統領選挙の主要な公約の一つとして掲げており、支持者からは強い支持を得ている。しかし、実現には多くのハードルがあり、専門家は「法的な壁に加え、軍内部からの反発も予想される。国防総省の高官の中には、軍の本来の任務である国防からリソースが逸れることを懸念する声もある」と分析している。