米国のトランプ政権がロシア産ディーゼル燃料(軽油)に対する制裁を一時緩和した。与党・共和党の苦戦が伝えられる来月の中間選挙をにらみ、エネルギー価格の高騰を訴える有権者へのアピールを優先したためだ。イラン攻撃による燃料高騰のツケをウクライナに回し、ロシアにすがった形となった。
制裁緩和の引き金はウクライナの攻撃停止拒否
米ニュースサイト・アクシオスによると、米国のスティーブン・ウィトコフ中東担当特使らは9日、米国内でウクライナの交渉団と会談。ウクライナがロシアの製油所への攻撃を停止する要請に応じなかったことが、制裁解除の引き金になったと伝えた。
中間選挙まで1か月を切る中、トラックや農業機械の燃料となる軽油の価格は高い水準で推移し、トランプ大統領は抑制に躍起だ。ただ、足元の資源価格高騰の主な原因は、米国のイラン攻撃にあるとの見方が強い。制裁緩和は、9月にトランプ氏が署名し、成立させた経済的圧力を強める対露制裁にも逆行する。
野党・与党内からも批判と懸念
上院民主党トップのチャック・シューマー院内総務らは声明で、対イラン攻撃に伴う燃料高騰の「尻ぬぐい」のため、「独裁者との取引に走っている」と批判した。共和党内からも「暴力と破壊を助長する」(テキサス州選出の下院議員)との懸念が出ている。
一方、戦費調達に窮するロシアは、国際市場への復帰による収入増に期待する。今年1~9月の石油・ガス収入は前年同期比で約17%減少し、財政赤字も拡大している。石油価格は上昇しているが、双方の攻撃が続く黒海でタンカーによる輸出量が低下していることが響いている模様だ。
ロシアの「貸し」とウクライナへの影響
英BBCによると、露側が今月輸出すると約束した軽油30万トンは、米国では半日程度で消費される量にすぎない。だがプーチン氏は攻撃をやめないまま、トランプ氏に「貸し」ができた。ロシアの求める条件をウクライナがのんで降伏するよう、トランプ政権への働きかけを強める見通しだ。
ウクライナ国営通信によると、露軍は10日、ウクライナ南部ザポリージャの集合住宅に滑空爆弾5発を投下し、子ども3人を含む12人が死亡した。