ルート66を40日間走破、分断アメリカの現場から見えたトランプ支持の実像
ルート66走破、分断アメリカの現場から見えたトランプ支持の実像

米中西部シカゴから西海岸ロサンゼルスへ延びる全長約4千キロの「ルート66」。かつて新天地を求める人々を西へ運び、自由と機会の象徴となったこの道の沿線には、2024年大統領選でトランプ氏が勝利し、共和党カラーの赤に染まった地域が連なる。11月3日の中間選挙を前に、記者はレンタカーで40日間、この道を走り、小さな町々に立ち寄って人々が守りたいもの、失ったと感じるもの、取り戻したいと願うものを聞いた。

シカゴから出発、赤い郡へ

レンタカーで中西部の大都市、イリノイ州シカゴを出発し、車を南西へ走らせた。1時間ほどでビルは見えなくなり、背丈より高いトウモロコシの列が窓の左右を流れていく。ラジオからはキリスト教牧師の激しい説教が響く。

同じ州のリビングストン郡に入った。イリノイは民主党の強い「青い州」だが、この郡は共和党が優勢な「赤い郡」だ。トランプ氏は大統領選での得票率を2016年の67%、20年の71%、24年の72%と伸ばしてきた。前回24年の大統領選では、州全体では民主党のハリス元副大統領が制したが、リビングストン郡はトランプ氏がハリス氏に46ポイント差をつけた「トランプ王国」だった。

ダイナーの常連客とマリーさん

旅の最初のコーヒーを飲もうと、小さなダイナー(大衆食堂)に入った。壁には「7月の誕生日」と手書きされた紙が貼られ、24人の名前が並ぶ。5席のカウンターは常連客で埋まり、「腰痛の具合は」「暑いからプールへ行こう」とファーストネームで声を掛け合っている。

店の忙しさが一段落して、店員のマリーさん(74)が取材に応じた。45年働いた元看護師だ。仕事と親の介護に追われていた頃、日々のストレスから一時退避するかのように店に通っていた。座れば、何も言わなくても紅茶、オムレツ、トーストが出た。「マリー、元気かい」と誰かが尋ねてくれる。「私は、ファーストネームで呼ばれるために来ていたんだな、と思う」と振り返る。

退職後、今度は店を手伝う側になった。店内のテレビでは、政治的な論争を避けるため、料理やショッピング、娯楽、映画などを扱う番組を流す。

急速なグローバル化によって、仕事や暮らし、受け継いできた価値観が揺らぐとき、人々は政治に何を求めるのか。それはアメリカだけでなく、日本や世界にも通じる問いだった。