米国とイスラエルによるイラン攻撃以降、中東ではホルムズ海峡を巡る情勢が焦点となる一方、パレスチナ自治区ガザでの人道危機に対する国際的な関心は薄れている。
特に、ガザでの停戦を仲介した米国のトランプ政権がイラン情勢への対応に忙殺され、ガザの窮状をなかば置き去りにしている事態を深く憂慮する。
停戦合意も隔たり大きく
ガザでは昨年秋、イスラエルとイスラム主義組織ハマスが和平計画に合意し、停戦した。戦闘停止に続き、ハマスの武装解除やイスラエル軍の完全撤退を進めることが盛り込まれている。
トランプ米大統領は7月末、ハマスが武装解除に向けた「歴史的な合意に達した」と発表し、和平計画の前進を主張した。だが、ハマスは、イスラエル軍撤退が条件だとする声明を出した。双方の立場の隔たりはなお大きい。
平和評議会とイラン攻撃
トランプ氏は今年初めに国際機関「平和評議会」を発足させ、自ら議長に就任した。ガザの再建を主導し、平和の立役者になろうとしていたのだろう。
だが、2月に平和評議会の初会合を開いた直後にイラン攻撃に踏み切った。イランが対抗策としてホルムズ海峡を封鎖し、世界経済に深刻な影響が及んだため、米国はイラン情勢への対応を優先せざるを得なくなった。
悪化する現地の状況
この間にもガザの情勢は悪化の一途をたどっている。停戦後も断続的な攻撃がやまず、1200人以上が死亡した。戦闘が始まった2023年10月からの死者数は7万3000人を超えた。
廃虚と化したガザで、住民約200万人はテント生活を強いられている。ゴミの山ではネズミが増えて、衛生状態は劣悪だ。がれきや不発弾の処理も進まない。
子供たちには栄養不足による発育の遅れが目立つ。医薬品が不足し、糖尿病などの慢性疾患が悪化する人も増えているという。
支援継続の必要性
にもかかわらず、イスラエルが人道支援を妨げているのは理解に苦しむ。特に実務経験が豊富なスタッフらを抱える国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)をハマスの隠れ蓑とみなし、活動を禁じている影響は大きい。
国連の協力なしに危機は乗り切れない。日本は国際機関や民間活動団体(NGO)を通じ、食料や物資を現地に届けてきた。支援の継続と拡大が欠かせない。
日本はパレスチナ支援に積極的な東南アジア諸国などと連携し、ガザを忘れないよう、国際的な世論を喚起することも重要だ。



