アメリカでは、テキサス州やフロリダ州などで、学校図書館や公共図書館が収蔵する本をめぐり異議が申し立てられ、撤去される「禁書」が起きている。他方、イリノイ州やミネソタ州は、禁書を法律で規制している。規制に至るまでの経緯について、関係者に取材した。
ドラァグクイーンが主人公の本に異論の声
きっかけは2022年6月の「読み聞かせの会」だった。リンカーンウッドは、イリノイ州最大の都市シカゴに隣接する人口1万3千人余りの自治体だ。外国生まれの人口の割合は、24年の全米平均では約15%だが、ここでは2倍以上の34%を占める。歩いていてもアジア系やムスリムなど多様な人とすれ違う。そんなリンカーンウッド公共図書館での「読み聞かせ」が、地域全体を揺るがす大騒動となった。
図書館では、毎回テーマを決めて「読み聞かせの会」を定期的に開いていた。そのときのテーマは「LGBTQへの理解」で、ドラァグクイーンが主人公の本だった。読み聞かせの後、保護者の一部から「このテーマだと知っていたら、自分の子どもは参加させなかった」という声が上がり、議論が一気に広がった。
怒鳴り合いの大混乱から選挙へ波及
「この本は読み聞かせに使うべきではない」「児童書コーナーではなく一般書に置くべきだ」「読み聞かせでも問題ないし、児童書として置くことにも賛成だ」……。
館長のコリーン・メローネさんは、蔵書について異議申立制度があることを説明する。「司書が専門的な観点からもう一度、本を評価する。その結果に申請者が納得しなければ、次は図書館の理事会が審議する」
今回は理事会での審議となった。理事会は「この本は子ども向けとして適切であり、蔵書として維持するべきだ」と判断。それでも納得しない住民は、理事会にさらなる検討を申請。理事会は自由に傍聴でき、40人ほどが座れる部屋で開かれたが、約80人が詰めかけ、怒鳴りあいの大混乱になった。
当時から理事を務めるシェリ・ドニガーさんは、問題になった本を手に、その後の経緯を語った。住民の一部は、理事会の判断を受け入れず、選挙を通じて理事を交代させようと動き出したという。禁書をめぐる論争は、図書館の中だけにとどまらず、地域の政治情勢にも影響を及ぼしつつある。



