混迷するイラン情勢を受け、中東経済にブレーキがかかっている。ホルムズ海峡の通航が平常化する見通しは立たず、地域の収入を支える原油輸出が滞ったままとなる懸念もある。国ごとに抱える事情も異なり、地域のパワーバランスは揺さぶられている。
イラン経済、大打撃
深刻なダメージを受けたのがイラン経済だ。英メディア「イラン・インターナショナル」は、「夕食はパンとチーズだけ、という日が多い」という国民の悲痛な声を伝えた。
核合意違反を受けて2025年に国連制裁が再発動され、イランではインフレが進んでいる。過去1年で肉類の価格は2.8倍、牛乳やチーズ、卵は2.6倍になった。
さらに、2月末の米国による攻撃は混乱を加速させた。空爆で石油関連施設が破壊され、制裁の網をくぐり抜けて中国向けに出荷していたとされる石油輸出も封じられた。
国際通貨基金(IMF)は7月、今年の実質国内総生産(GDP)成長率が前年比5.4%減になるとの見通しを示した。米イランの対立は6月の暫定合意後も続いており、経済はさらに落ち込む可能性がある。
米調査研究機関・民主主義防衛財団によると、イランでは2万か所以上の工場や生産拠点が損壊し、1200万人の雇用が危機にさらされている。マスード・ペゼシュキアン大統領には「経済復興には、10年以上かかるかもしれない」と報告が上がったという。
サウジ、計画縮小
中東の経済大国サウジアラビアは、2016年に公表した国家計画「ビジョン2030」に沿って、観光産業の振興など脱石油の取り組みを進めてきた。しかし、計画は見直しを余儀なくされている。
高さ500メートルの超高層ビルを全長170キロ・メートルにわたって連ねるスマートシティー「ザ・ライン」の建設計画は、「財政上の問題で大幅な規模縮小に追い込まれた」(英紙フィナンシャル・タイムズ)と報じられた。
2029年の冬季アジア大会会場となる予定だった人工雪のスキーリゾートは建設の遅れを取り戻せず、会場がカザフスタンに変更された。巨額の契約金で有名選手を引き抜いてきたツアー「LIVゴルフ」も、政府系投資ファンド「パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)」が資金提供の打ち切りを表明し、継続が危ぶまれている。
背景には、海外マネーを思うように呼び込めず、資金負担が過大になっている事情がある。サウジ政府は2030年までに、年間1000億ドル(約15.7兆円)の海外直接投資を呼び込む計画を示しているが、昨年は約330億ドル止まりだった。
石油輸出、不透明
今年初めまで下落傾向が続いていた石油価格は、2月末に米国がイランを攻撃したことで急騰した。しかし、ホルムズ海峡が事実上封鎖され、サウジの石油基地がイランの攻撃を受けて輸出が一時停止するなど、恩恵は得られていない。
サウジ政府は、ホルムズ海峡を避けて東部の油田地帯と紅海をつなぐパイプラインの増強を急いでいる。だが、紅海でもイエメンの反政府勢力フーシが船舶への攻撃を繰り返しており、安定的な石油輸出を再開できるかは不透明な情勢だ。



