トランプ前大統領が仕掛けた関税政策の影響が、米国企業のサプライチェーンに深刻な打撃を与えている。特に中国からの輸入品に課せられた追加関税は、部品調達コストを押し上げ、中小企業を中心に収益を圧迫。一部の企業は生産ラインの縮小や従業員の削減を余儀なくされている。
関税負担は500億ドル超、中小企業に集中
米国商工会議所の試算によれば、トランプ関税によって米国企業が負担した追加コストは2023年までに累計500億ドルを超えた。この負担の約7割は年商500万ドル未満の中小企業に集中しており、大手企業に比べて価格転嫁や調達先の切り替えが難しい実態が浮き彫りになった。
中西部で自動車部品を製造するA社(従業員80人)のCEOは「関税導入後、中国からのアルミ部品の価格が25%上昇した。コストを吸収できず、やむを得ず10人のレイオフを実施した」と打ち明ける。同社のように、サプライチェーンの再編に追われる中小企業は少なくない。
サプライチェーンの多元化が進むも、コスト増は避けられず
関税回避のため、多くの米国企業が調達先を中国からベトナムやメキシコなどに切り替えている。しかし、こうしたサプライチェーンの多元化には新たなコストが伴う。例えば、物流ルートの再構築や品質管理の再教育などが必要で、移行期間中の生産効率は低下しがちだ。
全米製造業協会の調査では、関税政策以降、サプライチェーンの変更を余儀なくされた企業のうち、約6割が「コスト増が利益率をさらに悪化させた」と回答。特に電子部品や機械分野では、代替調達先の開拓が難航しているという。
雇用と投資に波及、経済全体へのリスク
関税によるコスト増は、企業の雇用や投資にも波及している。全米経済研究所(NBER)の分析では、2018年から2020年にかけて、関税の影響を受けた産業で雇用が約0.5%減少したと推定される。また、設備投資の延期や縮小を決めた企業も目立ち、長期的な成長力の低下が懸念される。
コンサルティング会社デロイトのシニアアナリストは「関税がサプライチェーンの効率性を損ない、米国企業の国際競争力を弱めている。特に中小企業は、関税が永続的でない限り、大規模な投資に踏み切れない」と指摘する。
政権交代後も関税撤廃は進まず、不透明感継続
バイデン政権は発足後、一部の関税を一時的に免除したものの、基本的な関税枠組みは維持している。このため、企業の間では「いつ関税が復活するか分からない」という不透明感が漂い、長期的な事業計画を立てにくい状況が続いている。
カリフォルニア州で家電製品を輸入するB社の経営者は「関税が撤廃されるという期待は持てない。だからこそ、われわれは自らサプライチェーンを変革しなければならない」と語る。しかし、中小企業にはそのための資金や人材が不足しており、業界団体からは政府への支援要請が相次いでいる。
トランプ関税が米国経済に残した傷跡は深く、その影響はサプライチェーンの隅々にまで及んでいる。企業の収益悪化、雇用削減、投資停滞――これらの問題が解決される見通しは立たず、米国企業の苦闘は続きそうだ。



