トルコ東部のワン市で2025年2月、市民が選んだ市政を守るために夜通し抗議を続けたが、警察が市庁舎に突入し、127人を拘束した。中央政府から任命された県知事が即日、市長代行に就任した。この出来事は、2016年7月15日のクーデター未遂事件後に導入された「管財人」制度の一環であり、選挙で選ばれた首長が「テロ」容疑で職務停止になると、中央政府が任命する代行者が市政を掌握する仕組みである。
クーデター未遂後の非常事態と政令
クーデター未遂直後、トルコ政府は非常事態を宣言し、閣議決定により「法律の効力を持つ政令」を発令できるようにした。この政令により導入されたのが自治体の「管財人」任命制度である。選挙で選ばれた首長が「テロ」との関係を理由に職務停止となると、中央政府が任命する「管財人」が代行を務める。ワン市のケースもその一例であり、2024年3月の地方選挙で選ばれた市長が職務停止となり、県知事が代行に任命された。
市民の抗議と排除
ワン市の市民は2025年2月、市庁舎周辺で5日間にわたり夜通しの抗議を続けた。自分たちが選んだ市政を守るためだったが、地元報道によると、15日未明に警察が突入し、抗議者を排除して127人を拘束。中央政府から任命されたワン県知事が同日から市長代行として職務を開始した。この措置は、住民の意思を無視した「代行」の名の下での強権的な統治と批判されている。
連載「エルドアン氏のトルコ クーデター未遂から10年」
本記事は、クーデター未遂事件から10年を経たトルコの民主主義と統治の現状を探る連載の一部である。第1回「大統領がここにいます」では、クーデターの夜を変えたスマートフォンの画面に焦点を当て、第2回ではクーデターに立ち向かった市民の波、第3回ではSNS投稿がテロ関連罪で公職追放につながった事例を紹介。本記事は第4回に相当し、地方自治体における「管財人」制度の実態を描く。
制度の影響と批判
この制度により、中央政府に批判的な地方政府が次々と「管財人」に置き換えられ、住民の意思が政治に反映されにくくなっている。エルドアン大統領の強権化が進む中、欧州諸国からは批判の声も上がっているが、トルコ政府は「テロ対策」の必要性を主張している。ワン市の事例は、クーデター未遂後の圧力が平時の社会に浸透している実態を示している。



