トランプ前米大統領の関税政策が再び注目を集めている。日本企業の間では、中国からの生産移転を加速させる動きが広がる可能性がある。専門家は「サプライチェーンの多元化が不可避」と指摘する。
関税引き上げの影響
トランプ氏は大統領在任中、中国製品に最大25%の関税を課した。この政策は、中国に生産拠点を置く日本企業に直接的な打撃を与えた。経済産業省の調査によると、中国に進出する日本企業の約40%が「関税の影響を強く受けた」と回答している。
特に自動車部品や電子機器メーカーは、関税コストを吸収できず、生産拠点の見直しを迫られた。ある部品メーカーの幹部は「関税がなければ、中国での生産を継続しただろう」と述べている。
東南アジアへのシフト
こうした状況下で、日本企業は東南アジアへの生産移転を加速させている。タイ、ベトナム、インドネシアなどが主な受け入れ先だ。日本貿易振興機構(JETRO)のデータによれば、2023年の日本企業の対ASEAN直接投資額は前年比15%増の2.5兆円に達した。
一方で、中国市場の規模やインフラの充実度を考慮すると、全面的な撤退は現実的でないとの声も多い。商社関係者は「中国は依然として重要な市場であり、生産拠点としての優位性も完全には失われていない」と指摘する。
リスク分散の必要性
トランプ氏の再選の可能性もあり、日本企業はリスク分散を急いでいる。米中対立の長期化を見据え、サプライチェーンの多元化は経営上の重要課題となっている。ある電機メーカーの財務責任者は「関税リスクを軽減するため、複数の生産拠点を確保する必要がある」と語る。
しかし、移転には時間とコストがかかる。工場建設や人材育成、現地サプライヤーの開拓など、課題は山積している。経済産業省の試算では、生産拠点の移転には平均で3〜5年を要するという。
今後の展望
関税政策の行方は、11月の米大統領選の結果に左右される。トランプ氏が再選されれば、追加関税の可能性もあり、日本企業の対応はさらに加速するだろう。一方、バイデン大統領が続投した場合でも、中国への依存度を下げる流れは変わらないとみられる。
日本企業のサプライチェーン再編は、世界経済にも大きな影響を与える。中国からの生産移転が進めば、東南アジア諸国の経済成長を後押しする一方、中国の雇用や輸出に悪影響を及ぼす可能性もある。



