医療機関のクラウドファンディングが活況、目標額を上回る事例も
医療機関のクラファン活況、目標額上回る事例も

厳しい経営環境の下、医療機関が資金調達手段としてクラウドファンディングを活用する動きが広がっている。今年9月までの12年間で、公開されたプロジェクトは300件に達した。埼玉県内でも、患者支援を目的とした挑戦が続いている。

車いすや入浴用ストレッチャーの購入目指す

国立病院機構東埼玉病院(蓮田市)は今月、クラウドファンディングを開始した。同院は筋ジストロフィーや重症心身障害など長期療養を要する患者が多く、生活の質(QOL)向上のための設備投資を行いたいが、十分な予算を確保できないでいる。

課題の一つが車いすの更新だ。患者の「動きたい」「自分でやりたい」という思いに応えるため、安全性や機能性に優れた車いすを増やしたいが、資金不足で買い替えが進まない。また、病室で過ごすことの多い患者にとって楽しみとなる入浴設備も課題で、簡易的にお湯をためて入浴できる「入浴用ストレッチャー」の購入も難しい状況だ。

「患者さんに『安全な移動』と『笑顔の時間』を届けたい」との思いから、同院は車いすや入浴用ストレッチャーの購入費として600万円の調達を目指す。佐藤陽子看護部長は、車いすで自由に動けることが障害を持つ人々にとって大きな喜びであり、心身の安定にもつながると説明。「患者さんがよりよい生活を送ることができるよう、力を貸してほしい」と呼びかけている。

公立病院の8割が赤字経営

クラウドファンディングサービスを提供する「READYFOR」(東京都)によると、医療機関によるプロジェクトは平成27年に初めて公開され、当初は1件だった。その後、令和元年に8件、2年に16件、3年に35件と増加し、7年には60件、支援総額は約11億4000万円に上った。

背景には医療機関の苦境がある。総務省によると、全国の公立病院841の7年度決算では81.2%が赤字(経常損失)だった。物価高騰で光熱費や医薬品費などの負担も増加しており、設備更新の予算を確保できない医療機関が多く、資金調達手段としてクラウドファンディングの注目度が高まっている。

目標額を上回る支援も

支援の輪は広がっている。自治医科大付属さいたま医療センター(さいたま市)は昨年、救急車の導入を目指してクラウドファンディングを実施し、目標額2500万円を大きく上回る約6400万円の支援が集まった。救急車1台のほか、人工呼吸器なども購入できたという。

北里大メディカルセンター(北本市)も昨年、老朽化した救急車の更新に向けて挑戦し、目標額2300万円を上回る約3342万円の支援を得た。救急車の更新に加え、電動ストレッチャーの導入などにもつなげた。同センターの田村智救急科副部長は「皆さまのご支援によって実現した新しい救急車を大切に活用し、地域の安全と安心を守るとともに、次の世代へ救急医療を引き継いでまいりたい」とコメントした。