中国海警局が8月24日、北太平洋の公海上で北海道厚岸町の厚岸漁業協同組合所属のサンマ漁船に対し乗船検査を実施していたことが30日、分かった。関係者によると、漁船は午前2時ごろに検査を求められ、船内環境や操業日誌などを確認されたが、違反の指摘はなかった。検査を実施した船は、7月31日に津軽海峡を通過し、同海域に漁業監視に向かった「海警6305」と「海警6501」のいずれかとみられる。
NPFCの枠組みに基づく検査
今回の乗船検査は、日本や中国など9つの国と地域が参加するNPFC(北太平洋漁業委員会)の枠組みに基づいて実施された。国連海洋法条約(UNCLOS)が定める強制的な立ち入り検査である「臨検」ではない。
サンマ漁の主力である棒受け網漁は8月10日に解禁され、厚岸などから漁船団が北太平洋へ出港していた。船舶自動識別装置(AIS)を搭載した船舶の位置や操業状況を確認できる「グローバル・フィッシング・ウオッチ(GFW)」のデータによると、解禁以降、NPFCに厚岸漁港所属として登録された棒受け網漁船が少なくとも4隻、北太平洋公海上で活動していた。
漁協「初めてではない」
厚岸漁協の関係者は、産経新聞の取材に対し「(乗船検査は)初めてではない。そういうこともある。出漁説明会でも(制度などについて)聞いていたこと」と話した。
中国海警局は7月27日、海警船2隻が中国の山東省青島を出港し、北太平洋の公海上での45日間の漁業取り締まりパトロールを実施すると発表。「国連決議や国際条約に基づき、大国としてグローバルな海洋ガバナンスに積極的に参加し、公海の漁業資源の保全に取り組む」とアピールしていた。中国はNPFCに海警船26隻を検査船として登録。例年、2隻の海警船が派遣されている。
水産庁「適切にコミュニケーション」
水産庁の担当者は「中国当局からタイムリーな情報共有が行われており、把握している。コミュニケーションが適切にとれている。乗船検査はメンバー国が互いに行っている」と話した。水産庁は、NPFCの規則に基づき、2025年に14件の乗船検査を実施した。国の内訳は公表されていないが、過去の発表資料では、中国漁船への乗船検査を写真で報告している。
全国さんま棒受網漁業協同組合(東京)の担当者は「(乗船検査は)1年に1回か2回ある日常茶飯時のこと。(通常)ただ検査しただけで終わり、指摘もない。嫌がらせでもない。(北方領土周辺での)ロシアによる拿捕とは、全く違う。サンマの不漁の方が問題だ」と話した。出漁説明会では、水産庁とともに、規則の順守や検査の可能性、検査員ははしごで迎えるといったことを周知。「日本漁船はルールを守っており、指摘を受けるようなことはない」(同担当者)という。
東シナ海と北太平洋で異なる対応
中国海警船は機関砲を装備している。尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺ではたびたび領海に侵入し、日本漁船に退去を促すなど、国際法に反する主権侵害を繰り返してきた。一方、北太平洋では国際枠組みに従い、海警船が漁業監視を実施して国際協調をアピールしている。日本漁船に対し、東シナ海と北太平洋で全く異なる対応をとっているのが実情だ。



