デジタルマーケティングの専門家である垣内勇威氏(WACUL代表取締役)は、AIがどれだけ普及してもマーケティング実務における「社内調整」はなくならないと指摘する。検索エンジンや生成AIを使えば、マーケティング手法の「正解」は無料でいくらでも得られるが、多くの企業はその「正解」を実践するまでに果てしない社内調整を要するという。その原因を、デジタルマーケティング領域を例に3つに整理して解説した。
「正解」があふれても社内調整がなくならない理由
世の中には「正解」とされる情報があふれており、検索エンジンや生成AIにマーケティング手法の「正解」を問えば、それらしい答えが無料でいくらでも返ってくる。実際にそれらの「正解」を実践すれば、それなりの成果が得られるはずだ。しかし、多くの企業はこの「正解」を知ってから実践するまでに、泥臭い社内調整を要する。
なぜ「正解」があるのに社内調整が必要なのか。垣内氏は、その原因を3つに整理した。
第1の理由:他部門とのミッションやKPIの違い
第1に、他部門への社内調整が必要なケースだ。他部門はミッションやKPIが異なるため、「正解」を共有することに苦労する。デジタルマーケティング担当者なら必ずやったほうが良いと思えることでも、他部門からすれば自分たちが面倒な仕事を押しつけられることにほかならない。
例えば、BtoBなど営業が契約を決めるビジネスでは、マーケティング部門が営業部門の商談で何が起きたかを把握するため、記録をデータ化させようと躍起になる。しかし営業担当からすれば、手元の手帳やエクセルで顧客を管理できているのに、なぜわざわざ面倒なシステムにログインしてデータ化を手伝わなければならないのかと嫌な顔をするだろう。
デジタルマーケティング施策の多くは、複数部門にまたがって業務フローの変更を要求する。開発、生産、営業、販促、宣伝、広報、情シスなど幅広い部門間での社内調整が生じ、それぞれの部門にはそれぞれの「正義」と「正解」があるため、調整は一筋縄ではいかない。
第2の理由:上司との「解像度」のギャップ
垣内氏は、上司とのあいだに広がる「解像度」のギャップも原因の一つとして挙げている。詳細は次ページ以降で解説される。
第3の理由:調整を軽んじると戦略は実現しない
社内調整を軽んじてしまえば、どんな戦略も実現できないというのが垣内氏の主張だ。「正解」がどれだけ明確でも、それを実行に移すための調整がなければ、成果につながらない。



