AI時代だからこそ「1日15分のお節介」を――。84歳のPR会社創業者が、自分も世界もちょっぴり変わる生き方を説いている。お気に入りの黄色い椅子に座り、赤いワンピースがよく似合う高橋恵さん(84)。その言葉は、令和版のやさしさのカタチとして注目を集めている。
「愛のあるおせっかい」を提唱してきた高橋恵さん
高橋恵さんは1942年生まれ。PR会社「サニーサイドアップ」を創業したのち、70代で「愛のあるおせっかい」の必要性を説き、「おせっかい協会」を立ち上げた。世界中が「やさしいおせっかい」であふれ、社会が笑顔でいっぱいになることを心から願っている。
高橋さんはAIをすべて否定するわけではないが、便利になるほど、人と会って話すことや、誰かを頼る経験を意識して残したいと考えている。きっとその背後にある愛情や思いやりまでを含めて、人は誰かの言葉を受け取るからだ。
意見がぶつかる関係の中で人は成長する
意見がぶつかり、思いどおりにならない関係のなかでこそ、人は自分とは違う考え方を知り、成長する。とりわけ子どもには、心のこもったお節介に包まれる経験が必要だと高橋さんは考えている。
だが、核家族化も進み、年齢を超えた人とのコミュニケーションも最低限になりつつある現代、お節介は焼きにくくなっているのも事実。口出しして断られたらどうしようと、しり込みしてしまう人もいる。
断られても「ま、いっか」――軽やかに次の人へ
高橋さんの答えは、拍子抜けするほど軽やかだ。「『ま、いっか。次の人にやってみよう』って考えればいいんじゃないですか?」
ここからが「恵節」。お節介は営業と同じで、1人に断られても100人に拒まれたわけではない。大切なのは、粘り強さと無理強いを混同しないこと。相手の表情や返事を見て、嫌そうなら引く。
その加減は、実際に人と関わり、失敗しなければ身につかないのだと話す。「10件回って全部だめでも、そこで結論を出さないの。トランプ52枚にはエースが4枚あるでしょう。最初に出るか、最後に出るかはわからない。でも、エースは必ずある」
目の前の反応から学び、次の一手を変えていく。その繰り返しが、お節介にも商売にも欠かせない。
経営者は孤独だ。しかし、経営は1人ではできない。社員、顧客、取引先など、多くの人に支えられて会社は成り立つ。数字や制度を整えるだけでは、困り事の前兆や、まだ言葉になっていない期待を拾いきれない。まずは自分にできることから動いてみる――。そんな高橋さんの提唱は、AI時代の人間らしいつながりを考える上で、一つのヒントを与えてくれる。



