湘南・鵠沼海岸の人気かき氷店「埜庵」は、現在10月から6月まで店舗を営業し、7月から9月の夏季は百貨店の催事に出店するという営業スタイルを取っている。この決断には、娘2人の教育費捻出と安全確保という二つの理由がある。
冬期の安定と二本柱の経営
現在、売り上げはコロナ禍前以上に戻っているが、原材料の価格高騰などで利益は大きく出ていない。一方で、「常連さん」と呼べる新しい客の数が増えたことで、冬期の売り上げが伸び、安定してきているという。
かき氷の店であるため、かき氷一品の注文は必須にしているが、食事メニューも用意している。冬期はナポリタンやカレーうどんといった温かいメニューを提供し、好評だ。冬は食事と合わせることで、かき氷の価格を上げずに客単価を上げるのが埜庵の考え方だ。
教育費と安全確保が決断の背景
この営業形態にたどり着いたきっかけは、店長を務める長女と次女が同時に高校受験・大学受験を迎えたことだった。店主は「かき氷屋では、子ども2人分の膨大な教育費を捻出するのは厳しい。そこで、夏は百貨店の催事をはじめ、飲料メーカーやアイスメーカーとのコラボなど、とにかくいただく仕事は断らず全部受けました。映画のかき氷監修なんてのもありました」と語る。2人の受験が重なった2年間は、プライベートの休みが1週間もなかったという。
さらに、店舗のキャパシティ面でも営業に関する安全の担保ができないという判断があった。飲食店の安全管理の基本は食中毒対策だが、年々暑さが厳しくなる中で、真夏の行列は熱中症や交通事故の危険も生む。夏は潔く店を閉めるという決断に至った最大の理由は「安全の確保」だった。
行列しても儲からない現実
かつて鵠沼海岸の店舗では1日600人以上の客を相手にした時期もあったが、振り返ると流れ作業になり、納得のいくものを提供できているのか自問し続けていたという。現在は商品価格が上がった分、客の満足度を満たそうとすると1日300人分も用意できない。一方、デパートの催事では1日に1000人の来客があり、広い空間に加え、エアコンの効いた涼しい環境で行列ができても客の負担が少ない。



