法務省の研究会は30日、「大川原化工機」の冤罪事件で不当な身柄拘束を受けた元役員の島田順司さんらからヒアリングを実施した。島田さんは「保釈は例外ではなく原則であることを徹底していただきたい」と述べ、裁判所に対し「身体の自由を守る最後の砦」としての役割を果たすよう求めた。非公開で行われた研究会終了後、委員の河津博史・日本弁護士連合会刑事調査室長が明らかにした。
332日間の拘束と取り調べの実態
島田さんは332日間にわたった拘束を振り返り、「誰の身にも起こり得る事件だ」と話した。経験から、取り調べでは強い心理的圧迫を受けるためやり取りを正確に記憶するのは難しいと説明。取り調べの録音・録画(可視化)を全事件の全過程で義務化するとともに、容疑者や被告がメモや録音をする許可の必要性を訴えた。
冤罪の構造と裁判所の役割
その上で「冤罪は、長期の身体拘束によって精神的に追い詰められた人が事実に反する供述をしてしまう構造によっても生まれる」と分析。裁判所に対し「身体の自由を守る最後の砦」としての役割を果たすよう求めたという。
元警察幹部の意見も
この日は甲斐芳文・元大分県警刑事部長へのヒアリングも行われた。甲斐氏は取り調べとは「傾聴」だとしたうえで、録音・録画によって組織犯罪などの解明が難しくなるとの見解を示し、全事件での実施は「人的・物的な負担が重い」と述べた。
取り調べ可視化の経緯と課題
取り調べの可視化は2016年の改正刑事訴訟法で導入され、19年に施行されたが、義務化の範囲は刑事裁判が開かれる事件の数%にとどまる。改正法の付則に3年後の再検討が盛り込まれ、法務省は22年に前身の協議会、昨年12月に今回の研究会を立ち上げたが、見直しは実現していない。研究会では可視化の範囲拡大のほか、司法取引の新方式導入や取り調べへの弁護士立ち会いなどが課題となっている。河津弁護士は記者団に対し「スピード感をもって検討を進める必要がある。特に取り調べの録音・録画については、速やかな全事件・全過程での義務づけが必要だ」と語った。



