ニュージーランドの象徴キウイを支える「ゼスプリ・システム」の全貌
NZの象徴キウイを支えるゼスプリ・システムの全貌

キウイはニュージーランド人が築き上げた象徴

ニュージーランドの大地が生み出す、一風変わった宝石・キウイフルーツ。第1回で世界最大のキウイフルーツ販売企業・ゼスプリのキウイフルーツを栽培する果樹園を訪問したが、私たちの食卓に上るキウイフルーツは果樹園で収穫されたものがそのままダイレクトにやってくるのではない。こと品質にこだわるゼスプリのキウイフルーツは、生産から販売までいくつもの厳しいチェックを経てようやく市場に姿を現す。第2回では「ゼスプリ・システム」と呼ばれるそのプロセスに着目し、高い品質を支え価値を生み出し続ける人々の営みにフォーカスした。

キウイはニュージーランドの農産物輸出額ランキングで畜産物を除くとトップクラスに位置し、果物では常に1位の座に君臨している。つまりキウイはニュージーランド農業の顔であり、“ニュージーランドの象徴”と言っても過言ではない。そのトップの座は、キウイ本来の魅力を人々の日々の努力でさらに高め、より良いキウイを世界中に送り出そうとする奮闘によって守られている。キウイの「カラダにいい」「おいしい」というイメージも、健康価値を高めようと汗を流すニュージーランドの人々の営みが支えている。

厳しい基準とシステムがキウイの魅力をさらに高める

ゼスプリでは、果樹園の生産者が質の高いキウイを栽培するだけでなく、収穫後の選果場(パックハウス)でも厳格な品質検査が施される。今回はタウランガ郊外カティカティ地区にあるパックハウス「アパタ」を訪れた。アパタのGMトーマス・ワッツ氏は「ゼスプリ・システム」の概要を説明。「ゼスプリのシステムは3つの要素で構成されています。1つ目がゼスプリという会社、2つ目がサプライヤー、3つ目がグローワーで、パックハウスはサプライヤーに含まれています。そしてパックハウスの仕事は、キウイのケアと品質管理です」と語る。

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ゼスプリ・システムでは、キウイの生産から出荷までが「栽培」「収穫」「パッキング」「貯蔵」「出荷」の5工程に分かれている。果樹園でゼスプリの基準に沿って熟成し収穫されたキウイは、アパタのようなパックハウスに運ばれる。アパタは2つのパックハウスを所有し、グローワーからビンと呼ばれる大きな木箱で、合わせて1日3000箱のキウイが毎日運ばれてくる。現在260のグローワーと契約している。

届いたキウイは箱から出され、カメラやセンサーによる自動チェックと作業者による人力チェックを経て、品種ごとに箱にパッキングされる。人によるチェックでは形やサイズ、表面の傷などを一つひとつ選別する。パッキングされた箱はロボットで積み重ねられ、冷蔵庫で保管され出荷を待つ。出荷・輸出までのプロセスでは追熟は行わず、到着した各国の倉庫で販売時期に合わせて適宜熟成を行い、最もおいしい時期に店頭に並ぶ。

それぞれの箱にはバーコードが貼付され、どの果樹園から来てどの国へ出ていくのか、どのパックハウスでチェックと包装を受けどこで保管されているのか、トレーサビリティがしっかり管理されている。日本には最高級の「Class1」のキウイが輸出されている。

キウイの甘さも収穫前段階で綿密にチェック

キウイが「おいしい」というイメージを持つ人は多いが、キウイは酸っぱさが比較的前面に出る果物であり、酸っぱさと甘みのコンビネーションが好きという人も多い。しかし、酸っぱさを削ぎ落とせば極めて高い糖度を有した甘い果物である。ゼスプリの場合、果樹園で栽培している段階から糖度を綿密に検査する営みがその甘さを担保している。

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タウランガにある「ヒル・ラボラトリーズ」は、ゼスプリのキウイの高い品質を管理するため、甘さをはじめとした成熟度を調べる施設だ。ブランチマネージャーのブラッド・スティーブンス氏は「このブランチは5年前に設立されました。グローワーの果樹園に派遣したスタッフがサンプルを持ち帰り、ここでは主に熟成のチェックを行います。1日に250から300袋、シーズン全体では約2万袋のキウイを検査しています」と説明する。

熟成のチェックでは、糖度や酸っぱさ、色、実の入り具合などを中心に検査する。「検査の時点ですでに熟成しているかどうかではなく、消費者のもとに届いた時点できちんと熟成されたものになる、という視点でチェックします」とスティーブンス氏。大きさや重量、実の硬度などのチェックも行われ、硬度は出荷時期を判断するために計測される。

サンプルは、果樹の列を縦横に移動する、果樹園内をジグザグに動くという2つのパターンでランダムに採取する。ピッキングスタッフはGPSを備え、どのスタッフがどの果樹園で採取したかも記録。各サンプルにもバーコードが貼られ、トレーサビリティ管理が徹底されている。ゼスプリキウイはニュージーランド国内7拠点の第三者機関の検査施設で収穫前の成熟度をチェックしており、ヒル・ラボラトリーズは中でも最も大きな施設である。同施設では収穫前の成熟度検査に加え、土壌分析や残留農薬分析なども実施し、厳しい品質・安全基準に基づいて検査が行われている。

未来のキウイを生み出す研究開発の最前線

ゼスプリは品種改良と新種の開発を進め、よりおいしく、カラダも喜ぶキウイを世に送り出してきた。ベイ・オブ・プレンティ地方のテプケ郊外にある「キウイフルーツブリーディングセンター(KBC)」は、2021年にゼスプリとニュージーランド国営研究機関の合同出資で設立された施設で、新たな品種の研究開発に日夜勤しんでいる。

コミュニケーションスペシャリストのサラ・ヒッキー氏は、「世界で最も魅力的で、健康的なフルーツを通じて、より良い未来を届ける」というビジョンと、「より多く、より良く、より速く」キウイを届けるという原点、さらに「新規の品種ソリューションを提供することで、消費者、生産者、そして世界のサプライチェーンに変化をもたらすこと」という使命を紹介。新品種開発で重視する要素として、消費者については「味」「食感」「みずみずしさ」「外観」「栄養」「食べ頃の期間」、栽培者については「収量」「大きさ」「害虫や病害」「栽培管理」「サステナビリティ」、サプライチェーンに対しては「貯蔵期間」「日持ち期間」「果実ロス」「販売期間」「市場アクセス」を挙げた。

KBCでは最先端の遺伝学・ゲノミクスや植物病理学、昆虫学、化学などの知見をもとに、新たな品種の開発や品種改良に取り組んでいる。消費者が甘さを感じる要素についても科学的分析を大切にし、長い時間をかけ交配やテストを繰り返して、「ゼスプリ・サンゴールドキウイ」「ゼスプリ・ルビーレッド」に次ぐ品種の開発を目指している。約40年にわたり研究を続ける科学者のアラン・シール博士は「毎年約3万本の苗木を植え、何年にもわたる選抜を繰り返して次世代品種を開発しています」と語る。

1つの品種候補につき、植えてから果実ができるまでの2年、その果実に関するデータを収集する3年の5年計画で取り組む壮大なチャレンジだ。その5年を経て有望なものをゼスプリに送り、チェックを受ける。しかし、そこから商品化されるとは限らず、実際「ゼスプリ・ルビーレッド」の次なる品種については今も試行錯誤が続けられている。アラン博士は「過去20年から25年をかけ研究を続けてきた品種があるのですが、それが今後もしかしたら花咲くかもしれません」と期待を込める。

キウイには「カラダにいい」というイメージが強く、消費者の期待も高い。KBCでも「栄養」が重視されているように、ゼスプリは健康価値に特に注力している。第3回では、さまざまな研究結果からキウイの健康価値をクローズアップする。