ドイツ最大の自動車メーカーであるフォルクスワーゲン(VW)のリストラが難航している。業績悪化を受け、VWは2026年7月9日に監査役会を開き、2030年までの中期経営計画を協議した。モデル数を半減し、生産台数を10%削減する目標を掲げたが、雇用整理への言及は避けられた。労組の強い反発を受け、経営側は譲歩を余儀なくされた形だ。2024年にも同様の事態が発生しており、VWは構造改革の手を打てない状況が続いている。
業績悪化の実態:トヨタとの比較
VWの経営は深刻な状況にある。2025年のグループ全体の総資本利益率は1.1%と、トヨタの4.0%(会計年度)に大きく見劣りする。VWの不振は複合的要因によるが、最大の理由は中国市場での販売不振だ。かつてVWのキャッシュカウだった中国市場では、BYDなどEVに強い民族系メーカーが急成長し、内燃機関車に強みを持つVWは劣勢に立たされている。さらに北米市場ではトヨタのハイブリッド車(HV)にシェアを奪われている。
コスト高と労組の壁
国内のコスト高もVWを苦しめている。2015年の最低賃金導入以降、ドイツの賃金コストは急増。さらにロシアとの関係断絶によるエネルギー高が重くのしかかる。経営再建には収益と費用の両面でのリストラが不可欠だが、労組の反対で雇用整理は進まない。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの土田陽介主任研究員は「生き残りのためのリストラをしようにもできないVWの姿は、ドイツ経済そのものの縮図だ」と指摘する。
ドイツ経済の縮図
VWの苦境は、ドイツ経済全体の構造問題を反映している。中国市場での競争力低下、エネルギー高、賃金上昇など、VWが直面する課題はドイツ製造業の共通の悩みだ。VWがリストラを断行できない背景には、強力な労組の存在と、雇用保護を重視するドイツの社会システムがある。このままでは、VWの競争力はさらに低下し、ドイツ経済の足を引っ張る可能性が高い。



