トヨタ自動車が長年研究開発を進めてきた水素エンジン技術が、世界的な電気自動車(EV)シフトの加速により、岐路に立たされている。水素エンジンは二酸化炭素(CO2)を排出しない次世代エンジンとして期待されたが、EVの台頭によりその存在意義が問われている。
水素エンジンの可能性と課題
水素エンジンは、水素を燃焼させて動力を得る内燃機関で、走行時にCO2を排出しない。トヨタは2021年にカローラスポーツをベースにした水素エンジン車でスーパー耐久シリーズに参戦し、実証実験を進めてきた。しかし、水素の製造・貯蔵・供給インフラの整備が大きな課題となっている。現状、日本国内の水素ステーションは約170か所にとどまり、普及には程遠い。
EVシフトの加速と水素エンジンのジレンマ
世界では、欧州連合(EU)が2035年までにガソリン車の新車販売を実質禁止する方針を打ち出し、中国や米国でもEV普及政策が進んでいる。これにより、自動車メーカーはEV開発に注力せざるを得なくなっている。トヨタも2030年までにEVの世界販売を350万台とする目標を掲げるが、水素エンジンへの投資は相対的に縮小傾向にある。
トヨタの戦略:マルチパスウェイ
トヨタは「マルチパスウェイ」戦略を掲げ、EVだけでなく、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)、水素エンジン車など、多様なパワートレインを並行して開発する方針だ。しかし、市場のEVシフトが予想以上に速く進む中で、水素エンジンの市場投入時期は不透明になっている。
専門家の見解
自動車業界アナリストの山田一郎氏は「水素エンジンは技術的には興味深いが、コスト面やインフラ整備を考慮すると、現実的な解ではない。トヨタはEVへの本格転換を迫られている」と指摘する。一方、トヨタの豊田章男社長は「水素も重要な選択肢の一つ」と述べ、多様な技術の可能性を追求する姿勢を示している。
今後の展望
水素エンジンは、乗用車よりも大型商用車や船舶、発電用途などでの活用が現実的との見方もある。トヨタは2023年の東京モーターショーで水素エンジン搭載のコンセプトカーを公開したが、量産化のメドは立っていない。カーボンニュートラル実現に向け、どの技術が主流になるかはまだ不透明だが、水素エンジンはその選択肢の一つとして、研究開発が続けられている。



