モスフードサービスが展開する「玄米食堂あえん」が、ハンバーガー以外の新たな収益源として静かに存在感を増している。店名の横に添えられたモスフードサービスのロゴが、その背景を示す。同社は2026年3月期、国内モスバーガー事業で既存店売上高109.0%、客数106.3%と好調を維持する一方、新ブランドを通じて日常の定食需要を取り込む戦略を進めている。
「玄米食堂あえん」の魅力と価格設定
「玄米食堂あえん」の看板メニュー「里山定食」は1390円。白和え、ごま和え、ひじきの煮物など7つの小鉢に、からあげ、魚、玉子焼き、冷奴が並び、千葉県産コシヒカリ玄米に白米を独自ブレンドした「二八玄米」とみそ汁が付く。注文から6分で提供され、味は濃すぎず、量も満足感がある。からあげはやや重く感じるが、全体として心地よい満腹感を得られる。
価格だけ見れば決して安くないが、魚も野菜も小鉢も玄米も一度に食べられる内容を考えれば納得できる。特別な日のごちそうではなく、手早く腹を満たすファストフードでもない、その中間のポジションを狙う。
実際の利用シーンと顧客の声
実際の利用者は、この店を日常的に活用している。隣の席に居合わせた年配の女性は、一日おきほどの頻度で通うという。ただし毎回里山定食を頼むわけではなく、ご飯とみそ汁だけを単品で注文し、その日の気分で小鉢やおかずを一品足す。ときには紫蘇のソーダを添える。「そうすれば、よく来られる」と語る。
定食一式で1390円は安くないが、玄米ご飯とみそ汁を軸に好きなものを組み合わせれば価格は自分で調整できる。一食を食べきる店としてだけでなく、日々の食事を組み立てる場所として、この店は生活に溶け込んでいる。
単品メニューでは、北海道産ユキシズカ大豆を使用した「あえんの納豆」(食感が玄米に合うとメニュー表に記載)や、赤魚のゆずみそ煮が人気。自宅で簡単に作れない魚料理を外食で楽しめる点が支持されている。
顧客層と店内の雰囲気
夕方の店内には、1人で訪れた女性、会社帰りの男性、買い物帰りのシニア夫婦、若い女性の2人連れと、幅広い客層が集まる。満席ではないが、客足は少しずつ続いており、急ぐでもなく構えるでもない、日常の一食をとる空気が漂う。
モスフードサービスの好調と新ブランド育成
モスフードサービスの本業は足元で好調だ。2026年3月期の国内モスバーガー事業は、既存店売上高109.0%、既存店客数106.3%、既存店客単価102.5%を記録。値上げによる客単価上昇だけでなく、客数も前年を上回っている。この好調を背景に、同社は「ハンバーガー以外のブランド育成」を掲げ、「玄米食堂あえん」を新たな柱として育てる方針だ。
「玄米食堂あえん」は、ファストフードと高級定食の中間を狙い、顧客の日常的な食事需要を取り込む。モスフードサービスは、既存のモスバーガー事業に加え、この新ブランドを通じて外食市場での存在感をさらに強めようとしている。



