6月8日、関東運輸局が主催する「めざせ!海技者 セミナー in TOKYO」が東京・江東区のタイム24ビルにて開催された。本セミナーでは、船員を目指す方や船の仕事に興味を持つ方に向け、海運事業者などによる企業説明会や就職面接会が実施された。昨年よりも規模を拡大し、82社が参加、220名を超える学生や一般参加者が来場した。
船員志望者と海運事業者のマッチングを狙う
国土交通省は、船員を志望する方と企業の雇用マッチングを目的に、全国で「めざせ! 海技者 セミナー」を実施している。令和8年度は、6月に東京・福岡で開催、今後も7月に仙台・小樽、9月に今治、12月に静岡、そして来年2月に神戸と、各地で行う予定だ。船員を目指す方にとっては、一度に数多くの海運事業者の説明を受けることができるまたとないチャンスと言える。
国内の多くの業界において人材不足が課題となるなか、海運業もまた少子化の影響や就業者の高齢化が進んでおり、人材の確保が急務となっている。そのような背景もあり、本セミナーに参加する企業は昨年の70社から82社と大きく増加、抽選の都合で出展が叶わなかった企業もある人気ぶりだ。
220名を超える学生や一般参加者が来場
今回行われた「めざせ!海技者 セミナー in TOKYO」には、就職活動が本格化する短大2年生、高校3年生が主に訪れた。国立清水海上技術短期大学校(静岡県清水市)と国立宮古海上技術短期大学校(岩手県宮古市)、国立館山海上技術学校(千葉県館山市)、神奈川県立海洋科学高等学校(神奈川県横須賀市)、茨城県立海洋高等学校(茨城県ひたちなか市)より、220名を超える学生や一般参加者が来場。なお、清水海技短大・宮古海技短大の学生は、海技教育機構の練習船「銀河丸」で航海訓練中のところ、下船して参加したという。
船員を目指す学生たちは、どのような意識で今回のセミナーに挑んだのだろうか。清水海技短大2年の学生たちに話を伺ったところ、すでにエントリーしている企業のブースを訪れ、面接に関する質問をする方や、気になっていた企業に話を聞こうとする方など、皆積極的に情報を収集している様子。企業担当者との距離も近いイベントのため、業務内容だけでなく、給与面や休暇のサイクル、甲板と機関の人間関係など、リアルな質問ができる場だ。また中東情勢を受け、新エネルギーの活用状況や今後の展望について知りたい、という声もあった。
昨年よりもさらに大規模に、海運事業者ら82社が集う
数多くの企業が集まるなか、各社のブースでは動画やポスターを活用した説明を行っている。大阪に拠点を置く玄海汽船は、1975年に設立した辰巳商会グループに所属する海運事業者だ。ケミカルタンカー4隻、貨物船2隻、セメントタンカー1隻を擁しており、様々な船種を経験できる。
ひっきりなしに学生が訪れるブースには「新卒定着率88%」と書かれたポスターが。直近5年で17名が入社し、うち15名が現在も在籍しており、高い定着率を誇る。その理由を聞くと、「休暇サイクルの適正化」にあるという。内航海運の現場では、人が足りない場合乗船期間が延びがちという実情があるが、玄海汽船では乗船・休暇サイクルを適正化することや、本人の都合に合わせた休暇願い制度を用意し、休暇のタイミングを明確にしている。
実際に同社のブースでは、4月に入社して2カ月の乗船を終えた新卒社員が学生の対応をしており、乗船のサイクルがしっかりと回っていることがわかる。ブースで説明を受けた学生からは、船の雰囲気に関する質問や、最初に覚える仕事は何ですか? といった疑問が寄せられたそうだ。
多様な専用船と働き方の魅力
NSユナイテッドの内航部門であるNSユナイテッド内航海運は、セルフアンローダー装置を搭載した石灰石専用船やばら積みセメント専用船、炭酸カルシウム・フライアッシュ兼用専用船など、多様な専用船による輸送を担う。「荷役装置のある船は、船の中に工場があるようなイメージです。技術や粉体に対する知識を覚えることは、やりがいや自身の強みになるでしょう」と、同社で働くことの魅力を語った。
住友大阪セメントのグループ会社である大窯汽船は、セメント専用船でセメントの製品・原材料の海上輸送を行っている。「弊社では四級海技士を持って入社し、働きながら三級海技士の取得も可能です。また3カ月の乗船期間・35日の休暇というサイクルなので、ワークライフバランスがとりやすいです」と働き方をアピール。同社のセメント専用船は不定期航路のため、全国様々な港へ行けることも魅力のひとつだという。
海運業界では、就職後のミスマッチによる若年者の離職も課題になっているという。今回のセミナーでは、企業担当者に質問する学生たちの真剣なまなざしが印象的だった。「めざせ! 海技者 セミナー」は令和8年度も全国各地で開催される。リアルな企業の声を聴く貴重な場として、船員を目指す方はぜひ訪れてみてはいかがだろうか。



