電気自動車(EV)シフトの加速により、日本の自動車部品業界はかつてない変革を迫られている。これまでエンジンやトランスミッションなど内燃機関関連部品で高い競争力を誇ってきたデンソーやアイシンなどの大手部品メーカーは、電動化への対応を急ぐとともに、事業構造の抜本的な見直しを進めている。
デンソー、部品点数を半減へ
デンソーは、2035年までにエンジン関連部品の品目数を現在の約半分に削減する方針を明らかにした。同社はEV化により需要が減少するエンジン部品の生産を縮小し、電動化や自動運転関連の成長分野に経営資源を集中させる。デンソーの林宏之社長は「従来の部品ビジネスのやり方では持続不可能だ。電動化で部品点数が減る中、どう収益を確保するかが課題だ」と語る。
同社は2025年度までに電動化部品の売上高を1兆円に拡大する目標を掲げる。具体的には、EV向けのインバーターやモーター、バッテリー管理システムなどの開発を加速。さらに、M&Aや外部企業との提携を通じて、ソフトウェアや半導体の分野でも存在感を高める考えだ。
アイシン、EV用駆動ユニットで勝負
アイシンは、EV向けの駆動ユニット「eアクスル」の量産を強化している。同社は2025年までにeアクスルの生産能力を現在の3倍に引き上げ、世界シェア10%を目指す。アイシンの吉田守孝社長は「EVシフトはチャンスだ。従来のトランスミッションに代わるコア技術でリーダーシップを取る」と強調する。
eアクスルはモーターやインバーター、ギアボックスを一体化した製品で、EVの走行性能や効率に直結する。アイシンはトヨタ自動車向けに加え、他社への供給も拡大。中国のEVメーカーなど新規顧客の開拓も進めている。
業界再編の動きも加速
部品業界では、電動化への対応コスト増加を受けて再編の動きも活発化している。2023年には日立Astemoと本田技研工業の合弁会社が統合され、新会社が設立された。こうした動きは今後も続くとみられ、大手部品メーカーは規模の経済を追求しながら、電動化技術の開発競争を生き残る必要がある。
一方で、EVシフトの速度には不透明感も漂う。世界的なインフレや原材料高、充電インフラの整備遅れなどがEV普及の足かせとなる可能性がある。デンソーやアイシンは、ハイブリッド車(HV)向け部品の需要も当面は続くとみて、両面での対応を迫られている。
日本の自動車部品産業は、約60万人の雇用を支える基幹産業だ。電動化の波に乗り遅れれば、雇用や地域経済に大きな打撃となる。大手部品メーカーの生き残りをかけた変革は、業界全体の未来を左右する重要な試金石となる。



