中国の電気自動車(EV)用電池最大手である現代アンペレックス・テクノロジー(CATL)が、欧州での生産能力拡大計画を一時凍結したことが明らかになった。同社はハンガリーに大規模工場を建設中だったが、欧州全体でEV需要が鈍化していることや、サプライチェーンの不確実性を理由に、投資のペースを見直す方針だ。この動きは、世界の自動車業界が進めるEVシフトに黄信号がともった可能性を示唆している。
CATLの欧州戦略変更の詳細
CATLは2022年、ハンガリーのデブレツェンに約73億ユーロ(約1兆2000億円)を投じ、年産100ギガワット時(GWh)規模の電池工場を建設すると発表していた。当初は2025年の稼働開始を目指していたが、同社の広報担当者は「市場環境の変化を踏まえ、プロジェクトのタイムラインを再評価している」とコメントし、事実上の凍結を認めた。欧州では、ドイツやフランスなど主要国でEV購入補助金が削減された影響で、2024年の新車販売に占めるEVの割合が前年比で減少している。
欧州EV需要減退の背景
欧州自動車工業会(ACEA)のデータによると、2024年第1四半期のEV販売台数は前年同期比で約5%減少した。特にドイツでは、補助金打ち切りが響き、EV販売が前年比で約15%落ち込んだ。こうした需要減退に加え、中国製EVに対する欧州連合(EU)の追加関税措置も、CATLの投資判断に影響を与えたとみられる。EUは2024年7月、中国製EVに最大約38%の追加関税を課す暫定措置を発表している。
CATLのグローバル戦略への影響
CATLは世界のEV電池市場で約37%のシェアを持つ最大手だが、今回の欧州での生産凍結は、同社のグローバル展開に影を落とす可能性がある。一方で、CATLは中国国内での生産能力増強や、テスラやBMWなどとの長期供給契約に注力する方針だ。また、同社はリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池の新技術開発を進めており、コスト競争力の維持を図る。
EV業界全体への波及効果
CATLの決定は、他の電池メーカーや自動車メーカーにも波及する可能性がある。韓国のLGエナジーソリューションやサムスンSDIも、欧州での投資計画を一部見直している。専門家は「EV需要が予想ほど伸びていない中、各社は過剰投資を避けるために慎重になっている」と指摘する。国際エネルギー機関(IEA)の予測では、2030年までの世界のEV販売台数は従来予測から下方修正される可能性がある。
日本の自動車メーカーへの影響
日本の自動車メーカーにとっても、CATLの動きは無視できない。トヨタやホンダはEVシフトに慎重な姿勢をとってきたが、電池調達の多角化が重要課題となっている。CATLの欧州生産凍結により、日系メーカーは欧州でのEV生産計画の見直しを迫られる可能性がある。また、日本政府が掲げる「2035年までに新車販売を全て電動車に」という目標にも、現実的な障壁が浮き彫りになった。
今後の展望
CATLは声明で「長期的なEV市場の成長見通しに変わりはない」と強調しているが、短期的な需要変動に対応するため、投資の優先順位を見直すとしている。欧州での生産凍結は一時的なものとみられるが、市場環境が改善するまで再開のめどは立っていない。EVシフトの行方は、各国の政策やインフラ整備、消費者の受容度に大きく左右されることになる。



