水素エンジン車の実力:カーボンニュートラル燃料との比較で見えた可能性と課題
水素エンジン車の実力:CN燃料との比較で見えた可能性と課題

水素エンジン車の現状とカーボンニュートラル燃料との比較

水素を燃料として内燃機関で燃焼させる水素エンジン車が、カーボンニュートラル(CN)燃料車と比較して、CO2排出量の面で優位性を持つことが、最新の分析で明らかになった。しかし、水素製造時のエネルギー効率やコスト面では課題が残る。トヨタ自動車やマツダなどが水素エンジン車の開発を進めており、2023年のスーパー耐久シリーズではトヨタが水素エンジン車で参戦し、実証実験を重ねている。

CO2排出量の比較:水素エンジンが優位

経済産業省の試算によれば、水素エンジン車は、製造から走行までのライフサイクル全体で、CN燃料車と比較して約30%のCO2削減効果が見込まれる。特に、CN燃料がバイオマス由来の場合、原料調達や製造工程でのCO2排出が発生するのに対し、水素は製造時に再生可能エネルギーを使用すれば、ほぼゼロエミッションが可能となる。

一方、CN燃料は既存のガソリンスタンドやエンジン技術をそのまま活用できる利点がある。燃料供給インフラの整備が不要で、コスト面では水素よりも優位とされる。しかし、CN燃料の原料となるバイオマスや合成燃料の生産量には限界があり、大量普及には課題が残る。

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水素エンジン車の課題:エネルギー効率とコスト

水素エンジン車の最大の課題は、水素製造時のエネルギー効率の低さだ。水の電気分解による水素製造では、約70%のエネルギーが損失として失われるとされる。さらに、高圧タンクへの貯蔵や輸送にもエネルギーを要する。トヨタの試算では、水素エンジン車のWell-to-Wheel(燃料製造から走行まで)のエネルギー効率は約25%で、CN燃料車の約40%を下回る。

コスト面でも、水素はCN燃料に比べて高価だ。現状、水素1kgあたりの価格は約1000円で、これはガソリン1Lあたりの価格の約2倍に相当する。トヨタの水素エンジン車「GRヤリス H2」の燃費は約10km/kgで、ガソリン車の約15km/Lと比較すると、走行コストは約3倍となる。

自動車メーカーの取り組みと将来展望

トヨタは、2023年に水素エンジン車「GRヤリス H2」をスーパー耐久シリーズに投入し、実走行データを収集している。同社は水素エンジン車に加え、燃料電池車(FCV)も並行して開発しており、マルチパスウェイ戦略を掲げる。マツダも、ロータリーエンジンを水素で走らせる研究を続けており、2023年には水素ロータリーエンジンを搭載したコンセプトカーを公開した。

一方、日産自動車はCN燃料に注力し、合成燃料(e-fuel)の研究を進める。日産の試算では、CN燃料車は水素エンジン車よりも早期にコスト競争力を獲得できる可能性があるという。

専門家の間では、水素エンジン車とCN燃料車は競合ではなく、用途に応じて使い分けるべきとの意見もある。例えば、長距離輸送や大型車両では水素エンジン、乗用車の短距離走行ではCN燃料が適しているとされる。

政策支援とインフラ整備の必要性

水素エンジン車の普及には、政府の政策支援とインフラ整備が不可欠だ。日本政府は2023年6月に改定した水素基本戦略で、2040年までに水素供給量を現在の約200万トンから1200万トンに増やす目標を掲げる。また、水素ステーションの整備も進め、2030年までに1000カ所設置する計画だ。

しかし、水素エンジン車の販売はまだごく一部で、価格も高額だ。トヨタの「GRヤリス H2」は市販化されていないが、仮に販売された場合、価格はガソリン車の約3倍になると見込まれる。普及にはさらなる技術革新とコスト削減が必要だ。

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カーボンニュートラル実現に向けて、水素エンジン車とCN燃料車の両方の技術開発が進められている。今後、どちらが主流になるかは、技術進歩と政策支援、そして市場の選択に委ねられている。