米国産牛肉の価格が急騰し、日本の外食産業を支えてきた「輸入牛肉は安い」という前提が崩れつつある。牛肉研究家の片平梨絵氏は「代わりとなる豪州産の獲得も難しく、国内産も簡単には増産できない。牛丼1杯500円が不可能になる日も近い」と警鐘を鳴らす。
米国産牛肉の価格が前年比27%上昇
農林水産省の「食品価格動向調査」によれば、2026年6月の輸入牛肉の価格は前年同月比で27%上昇した。特に牛丼向けの米国産牛バラ肉(ショートプレート)は、2025年度比で約4割も値上がりしている。日本経済新聞(5月28日)が報じたこの数字は、急激な円安だけでなく、米国内の牛肉生産量減少が背景にある。
米国の牛飼養頭数は「キャトルサイクル」と呼ばれる10年周期の増減を繰り返す。現在はその底にあり、USDA(米国農務省)のデータによれば、2026年の総飼養頭数は8620万頭と約75年ぶりの低水準。生体牛の取引価格は史上最高値圏に達している。
日本の牛肉輸入量、5年で24%減少
日本の牛肉輸入量は減少の一途をたどる。財務省「貿易統計」によると、2025年の輸入量は49万6000トンで、2020年比で約18%(約11万トン)減少。中でも米国産は17万8000トンと、2020年比で30%も落ち込んだ。特に2023年以降の減少が顕著だ。
片平氏は「米国を襲った大干ばつが飼料価格を押し上げ、生産者の牛離れを加速させた」と指摘。また、牛タンやハラミなど特定部位も品薄・高騰しており、ステーキ用肉の供給も半減しているという。
中国の輸入再開でさらに厳しい調達環境に
追い打ちをかけるのが、中国の牛肉輸入再開だ。中国は2025年以降、米国産牛肉の輸入を積極的に拡大しており、世界の牛肉需給をさらに逼迫させている。片平氏は「中国は人口規模が大きく、購買力も高い。日本が同じ価格帯で競争するのは極めて難しい」と語る。
日本はこれまで、米国産に代わる調達先として豪州産に依存してきたが、豪州も干ばつや生産コスト上昇で供給が伸び悩んでいる。国内産牛肉は増産に時間がかかり、価格も高い。
「牛丼1杯500円」は限界に
こうした状況下で、外食産業の定番メニューである牛丼の価格維持が困難になっている。片平氏は「牛丼1杯500円という価格は、もはや限界に達している。近い将来、値上げやサイズ縮小を余儀なくされるだろう」と予測する。
一方、高級ステーキ店は富裕層向けの需要で好調を維持しているが、大衆向けの焼肉店やハンバーガーチェーンはコスト上昇に苦しんでいる。「輸入牛肉は安い」という時代は終わり、日本の食卓に変化が訪れようとしている。



