転勤制度の今後は? 若者が「本気で嫌」と声を上げる背景と専門家の見解
転勤制度の今後は?若者が「本気で嫌」と声を上げる背景と専門家の見解

転勤は、文献上は明治期の官吏の人事制度として登場するのが初めとされ、高度経済成長期に一般の正社員まで広がった。しかし、バブル崩壊やコロナ禍を経て、若者の間で「転勤が嫌だ」という声が強まっている。専門家は、転勤の今後のあり方について、個人の同意を基本とすべきだと指摘する。

転勤制度の変遷と揺らぎ

転勤は長期雇用を前提とする日本型雇用と親和性のある制度だった。企業にとっては人材配置や育成、組織活性化の手段となり、社員にとっても昇進につながるメリットがあった。夫が転勤すると妻が仕事を辞めて同行するのが当たり前とされ、企業が社宅を整備することで地域コミュニティーも生まれた。

だが、1990年代のバブル崩壊以降、企業が社宅を手放し、2000年以降は共働きが増加。2015年には女性活躍推進法も成立した。コロナ禍が転勤見直しの決定打となり、リモートワークの普及で必要性は薄らいだ。若い人は本気で「転勤が嫌だ」と声を上げ始め、大手企業であっても「転勤があるから就職先から外した」と話す学生もいる。

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転勤が家族に与える影響

京都産業大学の藤野敦子教授は、自身も夫の転勤で大学を辞めざるを得なかった経験を持つ。研究では2016年から延べ6000人にアンケートや聞き取りを実施。既婚女性約3000人を対象にした2016年の調査では、夫に転勤経験のある女性の新卒時の正規雇用率は83.9%だったが、結婚時には27%に低下した。

近年は正社員同士の共働きが増え、2020年以降は夫婦どちらかがいつ転勤するか分からない不確実さや、家族が離れる可能性から「子どもは無理かもしれない」という声が聞かれるようになった。藤野教授は転勤が出生率の低下にも関係し始めたとみている。

今後の転勤のあり方

欧米では転勤の対象は主に管理職や専門職で、家族の事情で打診を断ることができる国もある。藤野教授は「日本企業は社員の我慢や家族が負担を甘受することを前提にしてきた。今後の転勤は個人の同意を基本とすべきだ」と指摘する。

一方、大正大学の片山善博地域構想研究所長は、東京一極集中の是正と地方分散の受け皿作りが急務だと語る。地方自治体は大企業の誘致に頼るのではなく、地域の特質を生かした産業育成が重要だとする。具体例として、秋田県能代市の風力発電や岡山県真庭市のバイオマス発電を挙げた。

また、ADDRESS代表の佐別当隆志氏は、多拠点生活サービスの利用者がコロナ禍で急増したと話す。若者にも地方への憧れはあり、働く場所の解放が能力の解放につながるとの見方を示した。

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