「18歳の壁」を越えて:障がい児育児と仕事の両立支援、企業の取り組み広がる
「18歳の壁」越え育児と仕事両立支援広がる

障がいのある子どもを育てながら企業で働く親たちは、「就学後の壁」や「18歳の壁」と呼ばれる仕事と育児の両立を阻む様々な困難に直面している。こうした中、短時間勤務制度などの支援策を、社員が子どもの年齢に関わらず利用できるようにした企業が増えている。医療機器メーカー「テルモ」の事例を中心に、取り組みを取材した。

テルモ社員の実例:14歳の長男を支えながら働く女性

テルモで人工肺の開発を担当する48歳の女性は、知的障害を伴う自閉症がある中学3年の長男(14歳)を育てている。長男は一人で通学することが難しく、女性は朝7時40分に家を出て、中学校までの約1.5~2キロを歩いて送った後、仕事に向かう。放課後は「放課後等デイサービス」から長男が帰宅する午後6時半ごろまでに自宅に戻り、帰りを待つ。さらに、小学6年の次男と小学3年の長女の子育ても担っている。週1回テレワークを組み合わせ、短時間勤務とフレックスタイム制を活用しながら働いている。

女性は新卒でヘルスケアメーカーに入社後、退職。大学院に通い、専業主婦を経て、2016年に派遣社員としてテルモで働き始め、2021年に正社員となった。「勉強もしてきた。仕事がしたかった」と振り返る。

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「18歳の壁」とは何か

障がいのある子の育児と仕事の両立を困難にする「18歳の壁」とは、多くの企業で短時間勤務制度などの支援策が「小学校就学前」や「18歳未満」など年齢制限付きで適用されることが原因で、子どもが一定年齢に達すると支援が受けられなくなり、離職を余儀なくされる現象を指す。特に、障がいのある子どもは年齢を重ねてもケアが必要な場合が多く、制度の対象外となることで親の負担が急増する。

テルモでは、こうした課題に対応するため、短時間勤務制度を子どもの年齢に関わらず利用できるようにした。同社の人事担当者は「社員の多様な事情に柔軟に対応することが、優秀な人材の定着につながる」と説明する。

企業の取り組み拡大:年齢制限撤廃の動き

テルモ以外にも、短時間勤務制度の年齢制限を撤廃する企業が増えている。例えば、大手IT企業では、子の年齢にかかわらず短時間勤務を認め、テレワークの併用も可能にしている。また、製造業の一部企業では、介護や障がい児育児を理由とする短時間勤務を、対象年齢の上限なく利用できる制度を導入している。

専門家は「障がい児育児は長期にわたるため、年齢制限を撤廃することは離職防止に効果的」と指摘する。実際、テルモでは制度改正後、障がい児を育てる社員の離職率が低下したという。

課題と今後の展望

一方で、制度の認知不足や職場の理解不足が課題として残る。女性は「周囲の理解がないと、制度を使いづらい」と語る。企業側には、制度の周知徹底や管理職の研修が求められる。

政府も、障がい児育児と仕事の両立支援を強化する方針で、2026年度中にガイドラインを策定する予定だ。企業の取り組みと連動し、社会全体で「18歳の壁」を乗り越える環境整備が進むことが期待される。

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