2026年7月10日の東京金融市場は、片山さつき財務大臣の発言を受けて円高・株高・金利低下のトリプル高で反応した。片山財務大臣は「家計や年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)をはじめとする年金基金が日本の金融資産にさらなる投資をする方向で後押しする方策を追求したい」と述べ、市場はこれを国内資金還流の促進策と受け止めた。
資金の国内還流を促す機運の重要性
みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏は、本欄や著書で繰り返し指摘してきたように、政府・企業・家計の3部門が保有する潤沢な外貨建て資産が日本へ還流しないことが「仮面の黒字国」の実相であり、ここにメスを入れることが抜本的な政策対応になると論じる。「世界最大級の対外純資産」は日本の富ではあるが、日本国民に裨益していないのであれば、必要なのは「国富の再定義」である。
唐鎌氏は、地政学リスクが多発する世相を踏まえれば、かつては円高要因とされた「国境の外にたくさんの資産を抱えている」という事実は、今やプレミアム要因ではなくディスカウント要因になり得ると警告する。巨額の対外純資産を抱えながら円の価値が名実ともに切り下がっている理由は、真摯に検討する必要があると強調する。
公的年金運用は1年以上前から争点
GPIFの運用問題は今に始まった話ではない。公的年金の運用をめぐる議論は1年以上前から活発化しており、今回の片山発言はその流れを強めるものだ。GPIFは世界最大級の年金基金であり、その資産配分の変更は為替市場に大きな影響を与える。
現在、GPIFの運用資産は約200兆円に上り、そのうち外貨建て資産の比率は約50%と推定される。仮にGPIFが外貨建て資産を円資産へシフトする場合、大規模な円買いが発生し、円高圧力が強まる。
リバランスで生じる円買い金額シミュレーション
唐鎌氏は、GPIFが外貨建て資産の比率を10%ポイント削減し、円資産に振り向けた場合、約20兆円の円買い需要が生じると試算する。これは市場の想定を超える規模であり、円高を加速させる可能性がある。さらに、他の年金基金や家計も同様の動きを取れば、その影響はさらに拡大する。
ただし、本稿執筆時点では片山発言の意図する政策変更の内容や時期は判然とせず、詳細な論評は控える。しかし、政策の方向性として国内回帰を促す姿勢自体は必要であり、今後の動向が注目される。



