全とんの破綻が示す「規制なきファクタリング」の危険性と構造的脆弱性
全とん破綻が示すファクタリングの危険性

2026年7月、クレジットカード売り上げの早期決済代行サービスを手掛ける全とん(大阪市)が破産した。帝国データバンクによると負債は約1151億円に上り、同月時点で今年最大の倒産となった。

全とんの破綻の背景とファクタリングの仕組み

全とんの破綻は、単なる一企業の経営破綻として片付けるにはあまりに重大な示唆を含む。全とんが担っていた「ファクタリング」(早期決済代行)というビジネスモデルそのもの、そしてそれを取り巻く「規制の空白」に目を向ける必要がある。

ファクタリングとは、企業が持つ「売掛債権」を買い取り、支払い期日より前に現金化するサービスだ。飲食店の場合、クレジットカード決済で得た売り上げは、カード会社から入金されるまで数週間かかる。全とんは、入金分を立て替えることで店舗に早期入金し、手数料を得ていた。

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なぜファクタリングは中小企業に支持されるのか

仕入れや家賃の支払いが先に立つ中小事業者にとって、売り上げを素早く現金化できる仕組みは資金繰りの生命線だ。ファクタリングには、利用者とファクタリング会社だけで完結する「2社間」と、売掛先も交えて債権譲渡を通知する「3社間」がある。前者は取引先に知られず資金化できる手軽さから利用が多い。

ファクタリング市場は急拡大している。矢野経済研究所が2026年に発表したファクタリングを含む「補完金融・資金調達支援ソリューション」市場の推計によると、同市場は2024年度で5436億円、2030年度には2.9兆円規模に拡大する見通し(2024~2030年度の年平均成長率は32.6%)。中でもオンライン完結型の「デジタルファクタリング」が拡大し、2024年度に1000億円を突破した。

銀行が中小・零細事業者への貸し出しに慎重になる中、担保や信用力よりも「売掛債権があるかどうか」で素早く資金化できる点が、ファクタリングが支持される理由だ。全とんのカード決済立て替えも、この早期資金化ニーズを飲食向けに特化させた一形態だった。

全とんのビジネスモデルの構造的脆さ

問題は、その原資である。カード会社からの入金前に加盟店へ現金を渡すには、日々まとまった運転資金が必要だ。全とんはその資金を、主に銀行からの借入で賄っていた。「銀行から借りて、立て替える」モデルは、手元資金よりも大きな金額を常に回し続けるため、外部からの資金供給が細くなった瞬間に行き詰まる。

全とんは、まさにこの脆さ(もろさ)を露呈した。帝国データバンクによると、全とんの業績はコロナ禍で悪化。2020年3月期に約82億円あった収入は、翌期には約50億円へ急減した。さらに2024年、カード決済を可能にする加盟店契約の競争に通じない事業者と、他人名義で加盟店契約を結んでいた問題が発覚し、社員の退散や会社の書類捜査に発展した。収益力が衰え、信用を失い、資金調達が行き詰まって破綻に至ったとみられている。

破綻後に明らかになった事実は、このビジネスのリスクを一層顕著にした。報道では、全とんが少なくとも20年前から粉飾決算を続けていたという。手口は、預金残高の水増し(約170億円)、架空債権の計上(約154億円)、実質的に無価値な営業権の過大計上(約88億円)など。加えて、加盟店に支払うべき未払いの立て替え精算金(約217億円)を負債に計上していなかった。

その結果、表面上の純資産は2026年3月期に約24億8000万円あったが、粉飾を修正すると約605億円の債務超過だった疑いがある。立て替え原資となる銀行借入を引き出し続けられたのは、この粉飾で「健全な財務」を装っていたからにほかならない。

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地域銀行への波及と今後の課題

全とんの破綻は、地域銀行にも影響を及ぼしている。多数の加盟店の資金繰りを支えるがしらとして、東京スター銀行など複数の地方銀行(地銀)に焦げ付きが生じている。全とんの破綻により、これらの銀行の不良債権が拡大する可能性がある。

ファクタリングは、中小企業にとって有効な資金調達手段である一方、規制のない「グレーゾーン」での運用がリスクを高めている。全とんのケースは、ファクタリング業界全体の透明性向上と、何らかの規制の必要性を改めて浮き彫りにした。今後の動向が注目される。