日本の防衛産業の強化をめぐり、政府内で「防衛公社」や「国営工廠」の設立構想が浮上している。しかし、こうした組織論だけでは根本的な問題は解決しないと、軍事ジャーナリストの清谷信一氏は指摘する。税金を投入しても、統廃合や改革への意識が欠如している限り、産業は強くならないという。
US-2輸出構想の失敗が示す現実
象徴的な事例が、新明和工業が製造する飛行艇US-2の海外輸出構想だ。2011年時点で輸出が計画されていたが、現実にはほとんど進展していない。競合機と想定されたカナダのCL415と比較すると、その差は歴然としている。
CL415は双発で最大離陸重量が陸上19.95トン、水上17.24トン。価格は約25億円で、76機以上が量産されている。一方、US-2は最大離着陸重量47.7トン、最大離着水重量43.0トンと約2倍の規模で、調達単価は1機120億円。事実上、別カテゴリーの機体だ。
さらに、CL415が双発なのに対しUS-2は4発エンジンで、運用コストは桁違いに高い。仮にCL415ユーザーがUS-2に乗り換える場合、より大型のハンガーや洗浄設備への追加投資も必要となる。清谷氏は「これで売れると考えるほうがおかしい」と断じる。
「大本営発表」を繰り返す政府の責任
清谷氏は、政府と防衛省が輸出を容易に実現できるかのような「大本営発表」を繰り返してきた責任は重いと指摘する。「C-2輸送機の輸出構想も『画に描いた餅』に終わっており、事実を踏まえない空虚な政策は止めるべきだ」と述べている。
防衛産業の強化には、単なる組織再編ではなく、コスト競争力や国際市場での実需を無視した楽観論の打破が不可欠だ。税金投入だけでは産業は強くならず、抜本的な改革意識が求められている。



