トランプ前大統領が推進した関税政策が、トヨタ自動車の北米戦略に深刻な影響を及ぼしている。かつては円安と現地生産のメリットを享受していたトヨタだが、関税引き上げにより部品輸入コストが急増。利益率の悪化は避けられず、競合他社との価格競争でも不利な立場に立たされつつある。
関税が直撃するトヨタのサプライチェーン
トヨタは長年、米国市場向けに現地生産を拡大してきた。しかし、その生産工程では多くの部品をメキシコやカナダ、さらには日本から輸入している。トランプ政権が発動した関税はこれらの部品に広く適用され、コスト増加を招いている。
特に、エンジンやトランスミッションなどの基幹部品は日本からの輸入に依存する部分が大きく、関税負担は年間数百億円規模に達するとの試算もある。トヨタの北米事業の営業利益率は過去数年間で低下傾向にあり、関税がさらなる重しとなっている。
米国生産のメリットが消失する懸念
これまでトヨタは、米国で生産することで為替リスクを回避し、販売国での雇用創出による政治的リスクも軽減してきた。しかし、関税によって輸入部品のコストが上昇すると、現地生産の優位性が薄れる。
「米国で完成車を組み立てても、部品の多くを輸入していては関税のメリットを打ち消せない」と、自動車業界アナリストは指摘する。実際、トヨタの米国工場の部品現地調達率は約70%とされるが、残りの30%の輸入部品にかかるコスト増が利益を圧迫している。
競争力低下と戦略の再考
関税によるコスト増は、トヨタの競争力にも影を落とす。米国市場ではゼネラルモーターズ(GM)やフォードなどの地元メーカーに加え、テスラなどのEVメーカーも台頭。価格競争が激化する中で、コスト増を販売価格に転嫁できれば需要減を招き、転嫁できなければ利益率がさらに悪化する。
トヨタはこれまで、北米での生産能力を拡大し、2025年までに年間約250万台の生産を目指してきた。しかし、関税政策の不透明感から、今後の投資計画の見直しを迫られる可能性もある。
専門家の見解「生産拠点の再考が必要」
「トヨタは、関税の影響を最小限に抑えるため、部品調達の現地化をさらに進めるか、第三国に生産拠点を移すなどの抜本的な戦略変更が必要になるだろう」と、国際貿易に詳しい経済学者は語る。
一方、トヨタ側は「関税の影響を注視し、適切な対応を検討する」との立場を示しているが、具体的な対策は明らかにしていない。米国政治の動向次第では、トヨタの北米戦略全体の見直しを余儀なくされる可能性も否定できない。



