金融緩和が実施され、景気対策が打たれるとき、それらは個々の国民を直接豊かにするための政策ではない。あくまで国家システムを維持し、崩壊を防ぐための選択である。その結果として、ある層が利益を得る一方で、別の層は取り残される。この構造は、金融システムが投資家の利益のために存在しているわけではないという現実を浮き彫りにする。
金融システムの真の目的:公平ではなく存続
資産を持つ人が有利になり、持たない人が相対的に不利になることは、構造的に避けられない。それでも国家は動き続ける。なぜなら、国家が守ろうとしているのは「公平」ではなく、「存続」だからだ。この視点は、著書『なぜ金融の勝者はいつも同じ顔ぶれなのか 教養としての金融市場』(講談社+α新書)を上梓した鹿子木健氏(メデュ代表取締役)が指摘する金融の本質である。
銀行や証券会社の役割:誤解が生む不整合
市場は冷たい世界に見えるかもしれないが、これは善悪の話ではない。銀行も、証券会社も、国家も、それぞれに与えられた役割を忠実に果たしているだけだ。問題があるとすれば、それは私たちの側にある。彼らを「自分の利益のために存在している主体」だと誤解してしまうこと。その誤解が判断を歪め、期待と現実の不整合を拡大させる。
金融システムにおける個人の位置づけ
金融システムにおいて、あなたは「守られる存在」ではない。同時に、「切り捨てられる存在」でもない。組み込まれている存在だ。この前提を受け入れたとき、金融との距離感は大きく変わる。期待しすぎず、怯えすぎず、幻想を持ち込まない。そこからようやく、「使われる側」ではなく「使う側」の思考が始まる。



