台湾において、半導体をめぐる次の競争は、もはや先端プロセス技術だけではない。「水」もまた、極めて重要なカギを握っている。台湾西部では冬季の降水量が過去最低水準となり、水不足リスクが高まっている。そうした中、再生水は単なる環境保護のテーマから、生産能力の安定を左右する重要資源へと位置づけが変わった。
TSMCなどへの再生水供給を担う
とりわけ、TSMCのようなハイテク大手にとって、水は欠かせないだけでなく、「一滴たりともミスが許されない」存在だ。導電率や尿素濃度などの水質指標がわずかに変動しただけでも、ウエハー生産の歩留まりに影響を与え、ひいては世界のサプライチェーン全体へ波及しかねない。こうした中、水資源処理大手の山林水環境工程(山林水)が重要な役割を担っている。
山林水は、繊維や観光など幅広く事業展開する力麗グループの傘下で、現在、台湾の半導体業界向けに発注済みの再生水公共事業のうち、1日当たり9万トンの供給能力を管理している。これは再生水総供給量の約45%を占め、業界最大規模となる。さらに、TSMCの2ナノメートルおよび3ナノメートル先端プロセスを支える重要な後方支援企業としての地位を確立する。
台湾初の半導体製造向け再生水供給施設である台南市永康再生水センターへ足を踏み入れると、全長9.5キロメートルに及ぶ専用パイプラインが目に入る。ここでは、3段階の浄水工程を経て、21項目の重要な水質基準をクリアした再生水が、南部科学園区の貯水施設へ送られ、TSMC、聯華電子(UMC)、群創光電などのハイテク企業で利用されている。
改革の3本柱――「見直し」「統合」「自信の回復」
山林水の董事長に就任した郭又綺氏は、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)出身の経営者だ。彼女は就任後、組織改革を断行した。改革の3本柱は「見直し」「統合」「自信の回復」である。まず、既存の業務プロセスを徹底的に見直し、無駄を排除。次に、関連部門を統合して意思決定の迅速化を図った。そして、従業員一人ひとりが自信を持って業務に取り組めるよう、教育研修や評価制度を刷新した。
トラブル対応力こそソフトパワー
郭氏は「トラブル対応力こそが、我々のソフトパワーだ」と強調する。再生水供給においては、水質の急変や設備の故障など、予期せぬトラブルがつきものだ。山林水は、こうしたトラブルに迅速かつ的確に対応できる体制を整えている。例えば、24時間体制の監視システムと緊急時対応チームを設置し、問題発生から30分以内に現場対応が可能だという。
アメリカ・東南アジア進出も視野
今後の展望について、郭氏は「台湾国内でのシェア拡大だけでなく、アメリカや東南アジアへの進出も視野に入れている」と語る。特に、半導体メーカーの海外工場建設が相次ぐ中、再生水供給の需要は世界的に高まると見込まれている。山林水は、台湾で培った技術とノウハウを活かし、海外市場でも存在感を発揮したい考えだ。
山林水の取り組みは、半導体産業の持続可能な発展に貢献するだけでなく、台湾の水資源問題に対する一つの解決策を示している。今後も、同社の動向から目が離せない。



