双子用自転車専門メーカー「株式会社ふたごじてんしゃ」の返品率はわずか0.001%、リコール発生時もクレームは一切なかった。創業者の中原美智子氏は、子どもの教育費200万円を資本金に「背水の陣」で起業し、独自の販売手法で信頼を築き上げた。
販売前に適性確認を必須に「アセスメント販売®」
ふたごじてんしゃは、安全に使用してもらうため、販売前に購入希望者が「アセスメント販売®」と呼ばれる適性確認を受けることを必須としている。このプロセスでは、道路交通法や自分の環境、商品について学び、ふたごじてんしゃの利用が自分に適切かを確認する。また、全国各地で試乗会を開催し、特定の店舗では試乗体験も可能だ。
一見すると非効率で販売機会を逃すようにも思えるが、中原氏は「実際はユーザー、自転車販売店、メーカーのすべてにメリットがある『三方よし』の仕組みです」と語る。
驚異の返品率0.001%を実現
購入者はアセスメントによりメリットもデメリットも理解した上で購入するため、返品率はわずか0.001%にとどまる。万が一不要になった場合は、同社が希望者同士を仲介しリセールする仕組みを取っていたが、現在は自社の「リユースプラットフォーム」を立ち上げ、ユーザー自身が車体の状態を丁寧に説明した上で購入希望者と直接やり取りできるようにしている。
販売店とメーカーにもメリット
アセスメント販売®は自転車販売店にとっても大きなメリットがある。通常、自転車店は問屋から商品を買い取って販売するため、原則返品不可だ。従来の3輪自転車は「乗りづらい」「駐輪スペースを確保できない」などの理由で購入後に返品されるケースが珍しくなく、返品リスクはすべて販売店の赤字になる。しかし、ふたごじてんしゃは完全受注販売のため、店舗側の在庫・返品リスクは極めて低く、利益率は一般自転車と同水準に設定されている。
メーカー側も過剰在庫リスクが少ない。購入前にアセスメントを受けるため顧客データが把握でき、生産計画が立てやすくなる。
リコール時も感謝の言葉だけ
この丁寧で誠実な販売姿勢は、ユーザーとメーカーの間に絶大な信頼関係を築いた。以前、一部パーツのリコール対応が発生した際、同社は顧客データから100%の回収と訪問対応を達成。訪問先ではクレームではなく、「双子が乗れる自転車を作ってくれてありがとう」という感謝の言葉ばかりだったという。
中原氏の起業の原動力は「お出かけが当たり前にできること」への願い。教育費200万円を元手にした背水の陣の起業が、今や多くの双子家庭の移動手段を支えている。



