製薬中堅・小野薬品工業の屋台骨であるがん治療薬「オプジーボ」の特許切れが、いよいよ間近に迫ってきた。新薬の特許期間満了によって安価な後発薬が参入し、収益が急減することを、製薬業界では「パテント・クリフ(特許の崖)」と呼ぶ。オプジーボの特許は2028年のアメリカを皮切りに、30年にヨーロッパ、31年には日本でも切れる予定だ。
小野薬品の売上収益の5割超をオプジーボ関連が占める中、“オプジーボ・クリフ”対策は同社にとって長年の経営課題だった。その克服策に今、ようやく筋道が立ちつつある。
世界で1.6兆円を売り上げる超大型薬
オプジーボは、小野薬品と京都大学の本庶佑研究室との共同開発によって創製された、「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれるタイプのがん治療薬だ。14年にメラノーマ(悪性黒色腫)の治療薬として日本で発売され、同年のうちにアメリカ、15年にはヨーロッパ各国でも販売された。
現在は胃がんを筆頭に14種類のがんで適応が承認されており、グローバルでの製品売上高を合算すると約1兆6100億円(25年度)に上る「超大型薬」だ。世界で100万人以上が投与され、国内では肺がんを患う森喜朗元首相が15年から治療を受け、体調を回復させたことを公にしている。
画期的なのは、そのメカニズムだ。通常のがん治療薬は、がん細胞を直接攻撃したり、その増殖を妨げたりする。一方、オプジーボは患者自身の免疫でがんを攻撃する。
がん細胞は免疫の働きにブレーキをかけ、免疫の攻撃から逃れている。オプジーボは免疫細胞の表面にある「PD-1」と呼ばれるタンパク質と結びつくことでこのブレーキを外し、免疫が再びがん細胞を攻撃できるようにする。本庶氏はこのがん細胞による免疫抑制メカニズムを解明したことで、18年にノーベル生理学・医学賞を授与されている。
小野薬品はオプジーボの臨床試験と海外販売のパートナーとして、05年に米メダレックス社と提携。その後、米製薬大手のブリストル・マイヤーズ・スクイブ社(BMS)がメダレックスを買収したことで、盤石な開発・海外での開発・販売体制を獲得することに成功した。
そのため小野薬品が販売権を持つのは日本、韓国、台湾のみで、市場が大きいアメリカ、ヨーロッパ、中国などそれ以外の地域は、BMSが販売している。代わりに小野薬品は、売上高に応じたロイヤルティ(ライセンス料)をBMSから受け取っている。



