長崎市中心部で2024年に開業した「長崎スタジアムシティ」は、東京ドーム1.5個分の敷地にサッカースタジアムやバスケットボールのアリーナ、ホテルなどを備え、開業1年の来場者が約485万人に上った。人口減に直面する街ににぎわいをもたらしたのは、地元企業の新たな挑戦だった。
オフシーズンも多彩な催しで集客
サッカーJリーグやバスケBリーグがオフシーズンに入った7月中旬、シティではさまざまな催しが開かれ、多くの来場者が訪れていた。スタジアムのピッチで行われた水遊びのイベントに参加した長崎市の小学3年、松田橙真君(9)は「選手がプレーする場所で遊べるのは特別な気分」と目を輝かせた。
同じ頃、バックヤードでは、普段は立ち入れない選手のロッカールームや記者会見室などを巡るツアーに約30人が参加し、感激した様子だった。福井県敦賀市の建設会社役員、前田昌之さん(70)は「初めて来たけど、素晴らしい施設で感動した。スポーツを核にしてにぎわいを生む地域経済のモデルケースだ」と興奮気味に語った。
造船所跡地に新たな「街」
長崎市はかつて造船業で栄えたが、産業の衰退に伴い、働く場所を求めて多くの若者が福岡や東京に移り、人口減少が進んだ。1970年代に50万人を超えていた市の人口は、現在約38万人。2018~19年は、転出者数から転入者数を引いた「転出超過」が、全国の市町村でワーストを記録した。
シティが整備されたのは、三菱重工業が閉鎖した造船所の一つの工場跡地。JR長崎駅から徒歩約10分の一等地で、跡地活用に手を挙げたのが通販大手のジャパネットホールディングス(HD、長崎県佐世保市)だった。
1986年に創業し、全国的な企業に成長しても本社を長崎から移さず、本社内のスタジオからのテレビ通販にこだわってきた。サッカーJリーグ「V・ファーレン長崎」もグループ化し、スタジアムを中心とした街づくりで「地域創生」をテーマに掲げて18年に公募で選ばれた。
日常利用と集客の両立
20年にはバスケのプロチーム「長崎ヴェルカ」を設立。ジャパネットは約1000億円を投じ、約7.5ヘクタールの広大な敷地にスタジアムやアリーナのほか、ホテルや商業施設、オフィスなどが集まる大型複合施設を整備し、スーパーやドラッグストア、温浴施設、学習塾と地元住民が日常で使う施設も備えた。まるで新たな街が誕生したようだ。
Jリーグはホームゲームが年間二十数試合、バスケは約30試合しかない。試合がない日も来場してもらえるように、スタジアム上空を滑走するジップラインやフットサルコート、クラフトビールの醸造所も用意し、コンサートや歌舞伎、サッカー教室など様々なイベントも行ってきた。
運営するグループ会社「リージョナルクリエーション長崎」の岩下英樹社長(45)は「スタジアムやアリーナだけで収益を上げるのは難しく、一つの街を仕上げる必要があった。長崎の人が日常的に使う場所にはなりつつある」と手応えを語る。



