京都市中心部のホテル業界で、新型コロナウイルス禍で塩漬けとなっていた物件の再生や大規模な改装など、既存施設をグレードアップする動きが顕著になっている。円安を背景にインバウンド(訪日客)需要が拡大する好機を捉えると同時に、建設費高騰の中で建て替えよりも負担が軽いコストダウンの効果を狙うケースも見られる。
遊休不動産を再生、和風客室が好評
下京区に位置する「yugen kyoto shijo」(58室)は2025年12月に開業した。同ホテルの平田陽子総支配人は「宿泊客の9割以上が欧米出身で、和の雰囲気を楽しめるよう畳に高めのベッドを配置した客室が好評です」と語る。建物自体はコロナ禍の2020年12月に完成していたが、渡航制限や外出自粛による旅行需要の冷え込みから開業に至らず、遊休不動産となっていた。
この物件に着目したのは不動産コンサルティングのボルテックス(東京)である。同社は昨年3月、市内の未使用物件2棟とともに一括取得。既存の内装や設備を生かし、「上質な空間で自宅のように気兼ねなく滞在したい」という訪日客の需要に応える3つのホテルとして再生した。
グループ会社のボルテックス投資顧問(同)の小山貴行代表取締役は「建築単価の高騰で新規の開発投資は控えているが、既存の未利用建物を地域のニーズに合わせた施設に再生する事業に注力している」と説明する。
歴史あるホテルの改装相次ぐ
大型ホテルの改装も相次いでいる。京都駅そばに1981年に開業した京阪グループの京都センチュリーホテル(下京区、214室)は3月1日に新装開店した。閑散期の1月13日から2月末にかけて一時休館し、一部客室やレストランを刷新した。
総支配人で京阪ホテルズ&リゾーツ(同)の桜井美和常務は「老朽化した設備の更新期を迎え、歴史あるホテルを紡ぐため、建て替えではなく改装の方向へかじを切った」と話す。同ホテルでは、靴を脱いで過ごせる人気客室「京プレミアム」の品ぞろえとして、ゆったりとした空間を求める訪日客向けに5月から38平方メートルの4室、30平方メートルの12室の提供を開始した。
ブライトンホテルも改装、ヒルトンブランドに
1988年開業の京都ブライトンホテル(上京区、182室)は11月末で営業を終了する。その後、全館改修を施し、2028年冬に「京都ブライトンホテル キュリオ・コレクション by ヒルトン(仮称)」(約160室)として新規開業する予定だ。米ホテルチェーン大手のヒルトンとフランチャイズ契約を結び、引き続き「ブライトンコーポレーション」(千葉県浦安市)が運営する。同社の松本伸一・京阪マーケティング部課長は「客室単価は引き上げることになるだろう」と述べている。
建設費高騰が改装後押し
こうした業界の動きについて、一般財団法人・日本不動産研究所の芦川直樹・京都支所長は「資材価格や労務単価の上昇に伴う建設コスト高騰の影響は大きい」と指摘する。2019年と比較すると、京都市内の建設費は約3割上昇しているという。
一方、京都市観光協会によると、訪日客数は昨年まで4年連続で増加している。芦川氏は「観光業界には、今のタイミングを逃してはならないという考え方が根強い。リニューアルを選ぶ流れは当面続くのではないか」と分析している。



