日本遮熱株式会社の代表取締役・野口修平氏は、真夏にエアコンをかけても冷えない家の特徴について、断熱材への誤解が原因だと警鐘を鳴らす。同氏によれば、断熱材を厚くすれば暑さを防げると考えるのは間違いで、断熱材は熱を遮断するのではなく、伝わる速度を遅らせるだけの「熱伝導の遅延装置」にすぎない。むしろ、夜寝るときにじわじわと家の中を暖めてしまうという。
断熱材に「熱を断つ力」はない
現在、日本の建築物の多くは室温調整に断熱材を用いている。しかし、野口氏は「断熱」という名称に反して、断熱材は熱を完全に遮断する素材ではないと指摘する。その本質は熱の移動を止めるのではなく、時間的に遅らせる効果にある。つまり、断熱材は熱の侵入を止めるのではなく、いったん内部にため込み、時間差をつくることで室内環境を調整する。性能は「時間」とセットで判断しなければ意味がない。
熱移動の三形態と断熱材の限界
熱の移動は「伝導」「対流」「輻射」の三形態に分類される。すべての熱移動は「高温から低温へ向かう」不可逆な性質を持つ。断熱材が直接的に抑制できるのは「伝導熱」のみだ。経済産業省資源エネルギー庁「省エネ性能表示制度資料」(2023年)でも、断熱材の評価指標は熱伝導率(λ値)で示される。断熱材はグラスウールやロックウール、発泡ウレタンなど、内部に大量の空気層を含み、空気の熱伝導率の低さを利用して分子間の熱の受け渡しを遅らせる。しかし、熱が遮断されるわけではなく、高温から低温へ移動する自然法則を遮ることはできない。
輻射熱が建物の熱収支の約75%を占める
断熱材は伝導熱に対して働くが、実際に建物に出入りする熱の約75%は「輻射熱」である。輻射熱は電磁波として空間を伝わり、真空中でも移動する特性を持ち、室内温度に大きな影響を与える。野口氏は、この輻射熱対策の重要性を強調する。断熱材だけでは輻射熱を防げず、夏の暑さ対策には遮熱(輻射熱を反射する)技術が不可欠だと述べている。
断熱材は「蓄熱材」として機能する
野口氏は、断熱材がじつは「蓄熱材」として働く点を問題視する。昼間に屋根裏に降り注ぐ日射熱は、断熱材によって伝導が遅らされるが、完全に遮断されないため、徐々に室内に侵入する。夜になっても屋根裏温度は下がらず、蓄熱された熱が放射され、寝室を暖めてしまう。実験では、断熱材だけの家は昼間はまだしも、夜間に内部温度が上昇し、寝苦しさを生むことが確認されている。
「屋根裏」と「真夏の車内」は同じ状態
野口氏は、屋根裏は「巨大なオーブン」になると警告する。真夏の車内が短時間で高温になるのと同様に、屋根裏も輻射熱で加熱され、その熱が断熱材を通じて室内に遅れて伝わる。この「遅れてくる熱」が夜間の不快感の原因だ。通気性を高めても、輻射熱対策をしなければ部屋は冷えないという。
まとめ:日本の住宅に求められる遮熱対策
野口修平氏は、著書『地球を守る! 快適な生活が手に入る!「遮熱」超入門』(日刊現代)で、日本の高断熱住宅が夏の暑さに対応できない致命的な欠点を指摘している。断熱材だけに頼るのではなく、輻射熱を反射する遮熱材の活用が、日本の夏の寝苦しさを解決する鍵だと結論づけている。



