ドイツ最強代理人事務所の哲学:指図されていい仕事はできない理由
ドイツ最強代理人事務所の哲学:指図でいい仕事はできない

華やかなピッチの裏側では、選手の未来を左右する“もう一つの戦い”が繰り広げられている。本記事は、著書『最強の代理人 欧州最前線の代理人が日本サッカーを強くする』より一部抜粋・再編集してお届けする。

筆者の龍後昌弥氏は、ドイツ最大手の代理人事務所で活躍する数少ない日本人エージェントの一人。これまで多くの日本人選手を欧州へ導いてきた。欧州サッカー最前線に立つ著者自ら、知られざる代理人業界の内幕と、熾烈なビジネスの現実を明かす。

ドイツの経済界からもリスペクトされる代理人

優秀な上司、メンターのもとで働くことは、ビジネスパーソンが成長するうえで大きな要素の一つと言える。龍後氏が勤める「スポーツ360」には、まさにその環境がある。

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フォルカー・シュトルト会長とサーシャ・ブレーゼ社長は独自の哲学を持ち、ドイツの経済界からもリスペクトされている代理人だからだ。

フォルカーは25歳のときにオフィス用品を販売する会社を起業し、サッカーグッズの企画制作や広告代理店の仕事に手を広げて成功したビジネスマンである。2006年ドイツW杯に向けて、車の窓に取りつけるドイツ国旗の応援グッズを考案し、10万本を販売した。これらの事業により、フォルカーは数億円の財産を築いた。

そして運命を変えたのは、レバークーゼンを強豪に育て上げた伝説のGM、ライナー・カルムントの助言だった。「フォルカー、君は代理人に向いている。代理人をやらないか」

フォルカーは提案を受け、2007年に「スポーツ360」の前身となる事務所「シュポルト・トタール」を立ち上げた。

「人に指図されていたら、いい仕事はできない」

龍後氏は、スポーツ360の社風について「人に指図されていたら、いい仕事はできない」という信念が根底にあると語る。上司は細かい指示を出さず、各エージェントが自律的に判断し行動することを求める。この哲学が、クライアントである選手に対しても同様の姿勢で接することを可能にしている。

サーシャ社長は、高い共感力と厳しさを併せ持ち、選手のキャリア形成において長期的な視点を重視する。短期的な移籍金や年俸の最大化だけでなく、選手の人間的成長やキャリア全体の成功を支援する。

龍後氏は「サーシャ社長が示してくれた深い慈愛」についても言及。ビジネスライクな関係を超えた、選手への真摯な思いやりが信頼関係を築く鍵だと説明する。

代理人のイメージを覆した独自の倫理観

フォルカーは、代理人業界にありがちな「金のためなら何でもする」というイメージを覆そうとしてきた。彼の事務所では、透明性の高い契約と誠実な交渉を徹底。選手の利益を最優先に考え、時には自らの報酬を犠牲にすることもあるという。

この姿勢がドイツの経済界からのリスペクトを集め、多くのトップ選手が同事務所に信頼を寄せる理由となっている。

龍後氏は「欧州サッカー最前線で戦うためには、単なる交渉術ではなく、人間としての誠実さが不可欠だ」と強調する。

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