企業や投資家の間で、社会的価値と財務的リターンの両立を目指す「インパクト評価」への関心が急速に高まっている。従来のESG評価がリスク管理に主眼を置くのに対し、インパクト評価は企業が社会や環境に与えるプラスの影響そのものを測定し、価値として可視化する点が特徴だ。金融庁や日本経済団体連合会(経団連)も指標・データの整備を進めており、開示の枠組みづくりが本格化している。
インパクト加重会計(IWA)とは
連載の最終回となる第5回では、実際の投資パフォーマンスに与える影響を、日本株式とグローバル株式の2つの事例に基づき検証する。インパクト加重会計(IWA)は、「企業の社会的価値は『利益』と同じように計算できるのか」という問いに対する一つの答えとして導入が進んでいる評価手法である。
まず、日本企業を対象としたシミュレーション分析の結果を見てみよう。この分析は、Richmond Global Sciences(RGS)が提供するインパクト加重会計データを用い、野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティング(NFRC)が実施した。投資対象は、2016年7月から2025年12月までの期間における浮動株調整後時価総額上位500社である。
外部性評価で富士通が世界3位、日本勢トップ
外部性評価において、富士通は世界第3位、日本勢ではトップにランクされた。この評価は、企業の製品やサービスが社会や環境に与える外部効果を金銭価値に換算したものである。富士通は、テクノロジーを通じた社会課題の解決や環境負荷低減への取り組みが高く評価された。
一方、投資戦略としてのIWAの有効性について、NFRCの分析では、IWAスコアが高い銘柄で構成されたポートフォリオは、同期間のTOPIX(東証株価指数)を上回るパフォーマンスを示した。具体的な数値は有料会員限定記事に記載されているが、社会的価値の高い企業への投資が財務リターンにも寄与する可能性が示唆されている。
グローバル株式での検証結果
グローバル株式を対象としたシミュレーションでも、同様の傾向が確認された。IWAスコア上位銘柄で構成されたポートフォリオは、MSCIワールド指数を上回るリターンを達成した。これにより、IWAが投資戦略として有効であることが、日本市場だけでなく国際市場でも裏付けられた。
ただし、インパクト評価はまだ発展途上の分野であり、データの質や評価手法の標準化が課題として残る。金融庁や経団連は、開示の枠組みづくりを進めており、今後の普及が期待される。
今後の展望
インパクト評価は、企業の長期的な価値創造を測る新たな指標として注目されている。投資家にとっては、社会的価値と財務リターンを両立させる投資戦略の構築に役立つ。企業にとっては、自社の社会的影響を可視化し、ステークホルダーとの対話を深めるツールとなる。連載を通じて紹介してきたように、IWAはその中心的な手法の一つであり、今後の展開が注目される。



