社内起業制度や社内スタートアップ制度の導入は、伝統的な大企業における新規事業を担当する人材を経営幹部として育成する上で有効な施策の一つである。これらの制度の最大の特徴は、参加者に対して経営者に極めて近い立場と強い責任を伴う経験、さらには経営判断の権限を与えることで、実戦的な経営経験を積ませることにある。事業プランの立案、顧客検証、市場の受容性の評価、資金計画の策定、必要な組織構築、さらには撤退・ピボット判断など、事業の命運を握る重要な経営判断を当事者として自ら行うことが求められる。
失敗可能な環境の重要性
社内起業制度は企業が事業リスクを引き受ける枠組みで提供されているため、たとえ事業が期待どおりに成功しなかったとしても、参加者個人のキャリアに大きなダメージを与えることは比較的抑えられる。このような「失敗可能な環境」は極めて重要である。
新規事業支援制度の役割
新規事業は、金食い虫でも道楽でもない。未来に向けた探索であり、人と組織を育てる営みである。その前提を組織として共有できたとき、新規事業支援制度は単なる制度を超え、会社の挑戦文化を支える基盤となっていくはずである。
現場の声:イントレプレナーの体験
あるイントレプレナーは次のように語っている。「オーラルケア関連事業×日用品 男性 30代 研究開発部門で仕事をしてきた中で、新しいことに挑戦したいという思いがあっても、それを正式に試す場や仕組みがないと個人の問題意識だけでは動きづらいと感じていました。実際に新規事業に関わるようになってからは、事業の難しさ以上に「どう進めればよいのかわからない」「前例がないこと自体がリスクと捉えられる」といった組織面の壁に直面しました。その経験から、個人の意欲や能力に依存するのではなく、試行錯誤すること自体が許容される枠組みの必要性を強く意識するようになりました。新規事業支援制度があることで、挑戦が個人の逸脱行動ではなく、会社として認められた活動として位置づけられます。結果として、挑戦する本人だけでなく、周囲も関わりやすくなり、事業に向き合うための共通理解が生まれる。その土台をつくることが、仕組みの役割だと感じています。」



