トヨタ自動車の元副社長で、60年間生産現場一筋に歩み「おやじ」と親しまれてきた河合満氏が、入社当時に憧れた「白い帽子」の工長への思いと、次世代を担う若者へのメッセージを語った。
憧れの「白い帽子」が示すリーダー像
河合氏は「会社に入った時に一番憧れたのは、白い帽子をかぶった工長だった」と振り返る。この帽子をかぶった人は職場で威厳があり、仕事を熟知していたため、課長や部長でも太刀打ちできなかったという。「工長がうんと言わなければモノができんかった」と当時を回想する。
その一方で、現場では非常に厳しかったと述べ、「僕らがいいかげんなことをやると怒られた」と話す。しかし、帰りには屋台に連れて行ってくれ、酒を飲みながら「あんなことしたら、けがするぞ」と教えてくれたという。
「厳しく叱るけど、面倒見が良くて配慮がある。だから怒られても、『俺のために怒ってくれた』と思える。厳しさの中に愛情があって、そういう人たちにしごかれて僕は育った」と語る。白い帽子をかぶる人は「やっぱり違う」と感じ、「ああいう人になりたいと思った」と述懐した。
現代のリーダーに求められる資質
河合氏は、工長の証しである白い帽子を「神様の帽子」と表現し、トヨタの中で現存する白い帽子はこれだけで、執務室にいつも飾っていると明かした。自身も長年愛用しているという。
今の多様化した世の中では、「一人ひとりをどれだけ把握するか」が重要だと指摘する。技能や技術、性格など全てを把握した上で、その人に合った目標設定や対応をしないと通用しないと述べた。
「まず自分をさらけ出して、コミュニケーションがうまくいって信頼関係ができたら、少し厳しめに目標を出してみる」とし、一人ひとりに合わせた目標を出し、挑戦を繰り返すことが成長につながると説く。自分自身の成長を感じると、言われたことも受け入れやすくなるとしている。
若者へのメッセージ「挑戦に失敗はない」
河合氏は「僕は常に挑戦していたから失敗はない」と断言する。「挑戦してできなかったら課題が見つかる。その課題にまた挑戦すればいい。だから挑戦に失敗はない」と語る。作業についても、「どうしたらサボれるかと考えることによって、知恵が湧く。疑問に思わなかったら何も知恵が出ない」と持論を展開した。挑戦を続けてきた結果、「いつの間にか78歳になっていた」という。
若者に対しては、「憧れでもいいし、目標でもいいし、挑戦することが大事。これは遊びも一緒」と述べ、「仕事をそれぞれ全力でやって、終わったら仲間と一緒に遊ぶなら遊ぶ。そういう切り替えを、常にできると結構楽しくなるよね」とエールを送った。
河合満氏は1966年にトヨタ技能者養成所(現トヨタ工業学園)を卒業し、トヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)に入社。本社工場副工場長などを経て、2015年に養成所出身者として初の役員となり、17年4月から副社長を務めた。26年6月に役員のエグゼクティブフェローを退任している。



