EVシフト加速でエンジン部品メーカーが岐路に、生き残りへ水素・航空機事業に活路
EVシフトでエンジン部品メーカー岐路、水素・航空機に活路

電気自動車(EV)への移行が世界的に加速する中、エンジン部品を主力としてきた日本の自動車部品メーカーは、事業構造の抜本的な転換を迫られている。内燃機関向けの部品需要は今後10年で大幅に減少すると見込まれ、各社は水素エンジンや航空機部品、さらには医療機器など異分野への進出を模索している。

エンジン部品需要の減少とメーカーの苦境

日本自動車工業会のデータによれば、2023年の国内乗用車生産台数は約900万台で、そのうちEVの比率はまだ2%程度だが、欧州連合(EU)は2035年までにガソリン車の新車販売を実質禁止する方針を打ち出しており、主要市場でのEVシフトは不可逆的な流れとなっている。これにより、エンジンのバルブやピストン、燃料噴射装置などを手掛ける部品メーカーは、中長期的な需要減に直面している。

ある部品メーカーの幹部は、「エンジン関連の受注はピーク時に比べて3割以上減少している。このままでは10年後には事業の維持が困難になる」と語る。同社はすでにエンジン部品の生産ラインを一部縮小し、余剰人員の再配置を進めている。

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水素エンジンへの転換:既存技術の応用

こうした中、注目を集めているのが水素エンジン向け部品への転換だ。水素エンジンは燃焼方式がガソリンエンジンと類似しており、既存の生産設備や技術を応用しやすい。トヨタ自動車や日野自動車などが水素エンジン車の開発を進めており、部品メーカーにも新たな需要が生まれている。

例えば、ピストンリングやバルブシートなどの摺動部品は、水素燃焼時の高温・高圧に対応するため材質や表面処理の改良が必要だが、基本的な製造プロセスは従来と変わらない。ある技術者は「水素エンジン向け部品は、性能要件は厳しいが、我々のコア技術が生きる分野だ」と話す。しかし、水素エンジン車の市場規模は当面限定的であり、本格的な量産にはまだ時間がかかる見通しだ。

航空機部品への多角化:高い技術力が強み

もう一つの有力な転換先が航空機部品である。航空機エンジンにもタービンブレードやケーシングなど、自動車エンジンと共通する精密加工技術が求められる。特に、耐熱合金の切削や表面処理のノウハウは、自動車部品メーカーが長年培ってきた強みだ。

ある中堅部品メーカーは、航空機エンジンメーカーと共同で部品開発を始めており、2025年までに量産化を目指している。同社の社長は「航空機部品は認証取得に時間がかかるが、一度受注が決まれば長期契約が期待できる。自動車部品より利益率も高い」と説明する。ただし、航空機業界は安全規制が厳しく、参入障壁は高い。

異分野進出のリスクと戦略

水素や航空機以外にも、医療機器やロボット部品などへの進出を模索する動きがある。しかし、異分野では販路や顧客関係を一から構築する必要があり、投資回収に時間がかかる。業界アナリストは「自動車部品メーカーは技術力はあるが、マーケティングや営業体制が弱い。専門人材の確保やM&Aも含めた戦略が必要だ」と指摘する。

政府も産業転換を支援する方針で、経済産業省は2024年度から部品メーカーの新分野進出に対する補助金制度を拡充する予定だ。しかし、補助金だけでは生き残りは難しく、各社は自らの強みを活かした独自の戦略が求められている。

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結論:構造改革の成否が命運を分ける

EVシフトはエンジン部品メーカーにとって存亡の危機だが、同時に新たな成長機会でもある。水素エンジンや航空機部品への転換は、技術の応用が可能な現実的な選択肢だ。しかし、市場の変化は速く、決断と実行のスピードが問われている。構造改革の成否が、日本のものづくり産業の未来を左右すると言っても過言ではない。