名物駅弁「かしわめし」で知られる北九州市の老舗「東筑軒」に、大きな変化が起きている。2025年10月の事業譲渡を経て、同年11月に新社長として就任したのは、うどんチェーン「資さんうどん」で約20年にわたり店舗運営や出店開発を担当した山内裕太氏(41)だ。同社は2026年3月期まで9期連続の赤字を記録しており、山内社長は再建の第一歩として、看板商品「かしわめし」の味を原点に戻す決断を下した。
「僕が知ってる、かしわめしじゃない」
山内社長が就任直後に感じたのは、味の変化だった。子どもの頃から家族で食べてきたかしわめしの味が、いつの間にか変わっていた。彼は「これは僕が知ってるかしわめしじゃない」と語り、すぐにレシピの見直しに着手した。社長自らが工場に足を運び、製造工程を確認。昔ながらの製法や素材を再現することで、懐かしい味を取り戻したという。
9期連続赤字の背景
東筑軒は1992年のピーク時に約12億6000万円あった売り上げが、2020年には約3分の1にまで減少。コンビニやスーパーの弁当の台頭、コロナ禍による仕出し需要の落ち込み、原材料費や人件費の高騰が経営を圧迫した。さらに、駅弁市場自体が縮小する中、立ち食いスタイルの店舗では客層が限られ、収益改善が難しかった。
「駅弁から、地域の食堂へ」
山内社長は、東筑軒の新たなビジョンとして「駅弁から、地域の食堂へ」を掲げる。これまでは駅や直売店で弁当を販売し、立ち食いうどんを提供するスタイルだったが、立ち食いでは食べられる人が限られてしまう。「このまま立ち食いだけを続けるんじゃ、だめだなと思って。そのスタイルで、お客様を選ぶことはしたくない」と山内社長は語る。
初めて、駅の外へ
具体的な施策として、東筑軒は初めて駅の外に店舗を出店。できたての「かしわめし」やうどんを提供する新業態を展開し、地域の食堂として親しまれることを目指す。2026年6月には、グランプリ常連の名物駅弁を290円で提供する店舗が行列を呼ぶなど、早くも成果が表れている。
目指すは福岡のソウルフード
山内社長は、かしわめしを福岡のソウルフードに育てたいと考えている。子どもの頃から家族で食べてきた懐かしい味を、次の世代にも継承していくことが使命だと語る。老舗の伝統を守りながらも、時代に合わせた変化を恐れず、東筑軒の再建に挑む。



