84歳PR会社創業者が語る「名もなきお節介」の力 母を救った短い手紙とは
84歳創業者が語るお節介の力 母を救った手紙とは

84歳のPR会社創業者・高橋恵さんが立ち上げた「おせっかい協会の輪」が全国に広がっている。高橋さんは「良いお節介には、踏み込む勇気と手放す節度が必要です」と語る。母と子どもたちを救ったのは、名も知らない誰かの短い手紙だったという。

「あなたはどうしたい」と尋ねるお節介の作法

お節介なら何でもよいわけではない。「あなたのため」と言いながら、自分の正しさを押し付け、相手の選択を奪うことはよくないという。高橋さんが大切にするのは、相手に関心を寄せても、選択は相手に必ず返すことだ。「こうしたほうがいい」と決め付けず、「あなたはどうしたい」と尋ねる。「助けてあげる」ではなく、「必要なら一緒に考えるよ」と手を差し出す。こうして声をかければ、断られても関係まで壊すことはないという。

相手のペースを尊重し、手を引くことも上手にお節介を焼くコツだと話す。

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全国へ広がるおせっかい協会の輪

おせっかい協会は、決して一人の力だけで全国へ広がったわけではない。高橋さんの「天然お節介」に背中を押された賛同者が、また別の誰かを巻き込み、その輪が人から人へと連鎖していった。気がつけば活動は全国規模に成長。自分一人では無理だと思えたことも、他者のひと押しで現実になる、協会の歩みは、高橋さんの言葉を体現する一つの事例といえる。

とある会社の社長から社員全員に高橋さんの本を配りたいとの連絡があり、高橋さんは100冊分の「恵語録」を書いていた。カードにはそれぞれ違う言葉が書かれている。

食事に誘う価値とAI時代の人間らしいコミュニケーション

最近は職場で部下を食事に誘うことさえ難しい時代になってきた。誘う側は、立場の差から圧力にならないかと気を使う。誘われる側も、仕事外の付き合いを負担に感じる場合がある。だが高橋さんは、相手の意思を尊重することを前提に、それでも声をかける価値はあると考える。

「お節介には『あなたを放っておかない』というメッセージも含まれています。効率を大切にする今、食事に誘うことも、参加することも、費用対効果が悪いと思われるかもしれません。それでも、誰かを気にかける少しの余白や余計な関心が、孤立から人を救い、新しいつながりへ導くことがあるんじゃないでしょうか」

社会を少しずつ良くしてきたのは、採算の合わないお節介だったのではないか。AIが台頭する時代に突入した今だからこそ、必要なのは人と人との人間らしいコミュニケーションだとも語る。声をかけて煙たがられたらどうしようと悩み続けても、前には進めない。断られたときは、失敗を笑いに変えればいい。

「自分が好きでやっていることだと思えたら、煙たがられても『まあ、いいか』と思えます」

また、人に手を差し出すだけでなく、差し出された手を受け取ることも大切だと話す。「気をつかうことが多い世知辛い世の中になったけれど、お節介され上手になるのも大切ですよ」助けを受け入れることは、弱さではなく、相手との関係を育て、自分の可能性を広げる入口になるからだ。

大きな制度や立派な言葉でなくても、人を気にかけて動くことはできる。ただし、主役はあくまで相手。声をかけ、必要なら伴走し、最後は選択を委ねる。仕事も人生も、他人の小さなお節介が、閉じていた誰かの可能性の扉を開く鍵になる。

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