ミャンマー軍政下のヤンゴンで、78歳の日本人店主が営む和食店「角 ホーン」が閉店しない理由は、利益ではなく人との縁にある。店主の大舘堯(おおだて・たけし)さんは、「結局は人との縁ですよ」と語る。
元従業員との絆が生んだ出店
大舘さんはミャンマーを訪れるたびに、元従業員たちと交流を重ねてきた。その中で、繰り返し「ヤンゴンでも店をやってほしい」と言われたという。その声に背中を押され、大舘さんはミャンマー最大都市ヤンゴンでの出店を決意した。
しかし、その理由はミャンマーの成長性を見込んだからではなかった。「この人たちと一緒に何かをやりたい」という単純な思いからだった。中心となったのは、元従業員のティダさんである。
家族のような関係
ティダさんは1995年に日本へ留学した際、友人の紹介で「角 ホーン」でアルバイトを始めた。約5年間、大舘さんのもとで働き、料理や接客、店づくりを学んだ。大舘さんとティダさんは店主と従業員の関係を超え、大舘さんの家族とも親しく交流するようになった。その関係はティダさん帰国後も続いた。
「働いていた時だけでなく、オーナーのご家族とも長く家族のようなお付き合いをしてきました。大舘さんがミャンマーに来られた時には、私の家にもよく泊まっていました。私の両親とも仲が良く、家族ぐるみの付き合いです。私にとっては、日本のお父さんのような存在です」とティダさんは語る。
人とのつながりが生んだ和食店
2012年、元従業員たちを中心に、ヤンゴンで「角 ホーン」がオープンした。出店の決め手は市場の将来性ではなく、人とのつながりだった。大舘さんは「利益より家族を守る」という経営哲学を持ち、軍政下の厳しい状況でも店を続けている。



