キオクシアの株価は、時価総額でトヨタ自動車を抜いて日本一になった直後、約1カ月で半値になるという乱高下を見せた。2024年の上場から1年半ほどの間に起きた異例の「キオクシア相場」である。
NAND市況の回復とAI需要の重なり
この復活は、AI時代の到来だけによるものではない。2022年から2023年にかけてパソコンやスマートフォンの需要が低迷し、半導体メモリーのNAND価格は大幅に下落した。
その後、各社の減産によって供給が抑制され、在庫調整が進んで販売価格は回復した。そこへAIデータセンター向けの新しい需要が加わった。つまり、従来型のパソコン・スマホ向け需要の調整が一巡し、メモリー市況が回復したときに、AIデータセンター向け需要の拡大が重なった結果と見るべきだ。
トヨタを抜く衝撃と首位交代劇
キオクシアが時価総額でトヨタを抜いたことは、多くの人にとって驚きだった。ただし、トヨタが時価総額首位の座を失ったのは今回が初めてではない。
6月1日にはソフトバンクグループが、約22年間首位を維持していたトヨタを上回った。その後、キオクシアが両社を抜いて首位に立ち、さらに7月には三菱UFJフィナンシャル・グループがトップとなる局面も生じた。それでも、キオクシアが日本一になったことの意外性は大きかった。
なぜキオクシアの首位が意外だったのか
トヨタは長年にわたり日本を代表する企業であり続けた。日本の製造業が停滞あるいは衰退していく中で、自動車産業は日本の強力なリーディング・インダストリーであるというのが、産業構造についての共通認識だった。その中でもトヨタは生産規模、販売台数、利益、国際競争力など、さまざまな面で他企業を圧倒していた。
これに対し、キオクシアは誰でも名前を知っている企業ではない。半導体に詳しい人や株式投資をしている人でなければ、どのような会社なのか知らなかった人も多いだろう。そのような企業が上場後わずか1年半ほどで時価総額日本一になったことは、日本の産業と株式市場の構造が大きく変化していることを象徴する出来事だった。
「キオクシア相場」が物語るのは、AI時代でも逃れられない半導体業界の宿命だ。



